「逃走中」監督×プロデューサーが語る、映画で追求した登場人物の心情「テレビと同じことをしても意味がない」
「ワイルドハンターの怖さは、マックスにしておかなきゃダメだなと思ったんです(笑)」(西浦)
――映画では「ワイルドハンター」として、番組のハンターとはキャラクター設定を変えていますが、その意図は?
西浦「ハンターはアンドロイドなので、基本直線的な動きしかしないんですよね。じゃあ、ハンターが自分で考えてあらゆる方向に動けるとなったら、超怖いなと思って。上から飛び降りてきたり、飛びかかってきたりする要素を入れて、恐怖感を増幅するのに必要だなと考えました」
――そのビジュアルは、子どもが見たらトラウマになってしまうくらいかなり怖い造形になっていますね。
西浦「それはめちゃくちゃ議論になったんですよ。どこまで怖くしようかって。でも、そこはマックスにしておかなきゃダメだなと思ったんです(笑)」
笹谷「子どものころの怖い体験ってずっと覚えてるじゃないですか(笑)。実は西浦監督に撮っていただいた『逃走中』の番組の一つは、富士急(ハイランド)に妖怪がたくさん出てくるという回だったので、その流れもあるかもしれませんね」
――10年後とかに「ワイルドハンター」のビジュアルが脳裏をよぎって、あれ怖かったなあって思い返すのはとてもいい映画体験ですよね。
笹谷「そういういい意味でのトラウマになるとうれしいですね」
「メインキャスト6人の、ピュアでまっすぐな感情が映画にもすごく出ている」(笹谷)
――メインキャストにはJO1とFANTASTICSのメンバーから6人が起用されました。彼らをキャスティングした理由は?
西浦「まずこれからの人たちと仕事をしたいなと思ったんです。彼らの“上昇していこうというエネルギー”と“駆け抜けていく感じ”に惹かれました。一種のドキュメンタリー性も出るんじゃないかと」
――言ってみれば、JO1とFANTASTICSはライバルグループでもあると思うのですが、本作では同じ高校の陸上部の仲間という設定ですね。
西浦「映画では時間の都合上、高校時代のシーンはたくさん描けなかったんですが、本人たちが現場の待ち時間で、こちらが理想に抱いていたような雰囲気をつくって仲良く楽しそうにしていたんですよ。それが映画本編にしっかり滲み出ていて、物語に説得力を与えてくれました」
笹谷「ピュアでまっすぐな感情を出してくれて、そのフレッシュな感じが今回の映画にもすごく出ていると思います」
――『逃走中』はやはり「走る」というのが重要な要素だと思います。「走る」姿を撮る工夫は?
西浦「シチュエーションにもよりますね。先ほど言われたように、番組だとどうしてもカメラが近づけない部分がありますけど、映画では走っている寄りの表情も撮ったりしています。そのために何度も彼らに走ってもらって、足がガクガクブルブルになっていましたが、鬼教官のように『もう1回行くよ』って(笑)。若い彼らだからやり遂げられたんだと思います」
笹谷「番組の場合は、カメラマンとディレクターの3人1組でずっと走り回ります。逃走者とはぐれてしまうこともなくはないんですけど、なぜか不思議と一緒になれるんですよ。でも一番問題なのは、ガチでやっているのでやっぱりカメラに映っていない部分があるということ。最近はディレクターもカメラマンも全国から足の速い人を集めて、訓練もしてもらっています」
西浦「今回、番組の『逃走中』チームが手伝ってくれたので助かりましたね。笹谷プロデューサーとは昔からの知り合いなので、コミュニケーションがすごく取れたのが良かったです」