ミス・インターナショナル出身の超絶美女ヨム・ジョンア、演技派女優として歩んだ『密輸 1970』までの軌跡
女優としてのスター性が輝いた『完璧な他人』、韓国で大ヒット!
ヨム・ジョンアは『明日へ』(14)でも家族の幸せのために立ち上がる母親役で観客の胸を熱くした。スーパーで働く従業員たちが雇用解除の撤回を求めて企業と闘う姿を描いた本作は、2007年に韓国で起きた実話を元に制作された作品だ。彼女が持つ華やかさではなく、母親としての大きな愛情と大切なものを守るために立ち向かう強さを表現する。第51回百想芸術大賞では映画部門で最優秀女優賞を獲得し、第43回百想芸術大賞での『なつかしの庭』(08)以降、映画部門では2度目の受賞となった。
女優としてのスター性を見せつけたのが『完璧な他人』(18)だ。イタリア映画『おとなの事情』(16)のリメイク作品で、引っ越し祝いに集まった男女7人が夫婦愛や友情を確かめ合い、隠し事がないことを証明するために不マートフォンに届く電話やメールを全員の前で公開することになったブラックコメディ。スマホによってじわじわと暴かれる人間の本性はまるでホラーのようでもあり、修羅場化するパーティーから目が離せない展開が観客を引きつけ、529万人を動員するヒット作に。亭主関白で気難しい弁護士の夫を持つ貞淑な専業主婦役で、妙な空気のなかで彼女の表情の揺れに目がいってしまう。地獄の修羅場をさらに盛り上げる役どころを見事に演じ切った。
夢を実現し続けているベテラン女優、今後の活躍にも期待!
そして代表作とも言える「SKYキャッスル~上流階級の妻たち」。上位0.1%の富裕層しか住めない高級住宅街“SKYキャッスル”でのしれつな受験戦争を描き、本国では社会現象を巻き起こした超話題作として大ヒットを記録。
ヨム・ジョンアが演じたのはショートカットの髪形が印象的なハン・ソジン。大学病院の医師の夫を持ち、誰もが羨むセレブ妻で娘を最難関大学の医学部に合格させるべく、手段を選ばず欲望のままに徹底的にサポートする母親だ。いわゆるお受験ママたちの中心となる人物で最後まで物語をけん引する大役を引き受け、第55回百想芸術大賞のテレビ部門で最優秀女優賞を取る。日本でもリメイクが決定し再び話題となっているので、見たことがない人はもちろんだが、もう一度見返しても楽しめるドラマであることは間違いない。
ヨム・ジョンアという人物に焦点を当てると、幼い頃から歌って踊るのが大好きで役者になってからもミュージカル映画に出たいと口にしていた。それが叶ったのが『人生は、美しい』(22)である。余命宣告を受けた妻に離婚を突きつけられた夫(リュ・スンリョン)。妻の願いである“初恋の人を一緒に捜す”というミッションのために夫婦で最期の旅に出る。この何とも奇妙な物語で韓国の懐メロを自信たっぷりに披露している。1972年生まれで52歳になるヨム・ジョンアはベテラン俳優と呼ばれてもおかしくない。それでもなお「昔も今も俳優の仕事がすごく楽しい」と言いながら夢を実現し続けている役者なのだ。
文/ヨシン