「夏の“怖い”思い出にしてほしい」清水崇監督と渋谷凪咲が明かす、学園ホラー『あのコはだぁれ?』の舞台裏
「“怖がる”ということは、こんなにも体力を使うんだなと実感しました」(渋谷)
――渋谷さんのなかで特に印象に残っている演技、普段の自分とは違うことをしているなと感じたところはありますか?
渋谷「叫び声を上げるところもあれば、震えて汗が止まらないといったシーンもたくさんあって、“怖がる”ということはこんなにも体力を使うんだなと実感しました。休憩中も誰かと喋ってしまうことで現実に戻されてしまうような気がして、この恐怖から離れないように一人で過ごしてみたり。改めて考えると、それは普段の自分ではなく、ほのかとしての向き合い方で、知らない世界に飛び込んでいるような感覚で楽しかったです。監督からは『本当に怖い時は声が出なくなる』とか、『自分の気配を消すように目だけで周囲を見渡す』とか、いろいろな怖がる表現を教えていただきました。いただいたヒントをもとに演じてみて、監督からOKが出たらそのお芝居は正解だったんだなと判断していました」
清水「結局、現場では監督がOKを出すかどうかを頼りにするしかないところはありますね。ただ、僕はそれが絶対的な正解だとは思っていない、思いたくない性分なので、役者だけでなく、スタッフからも『監督、もう一回やらせてもらっていいですか?』『例えば、こういうのどうですか?』などと言っていただくことはうれしく、さまざまな意見や提案が出やすい現場こそが有意義だし、監督の僕が気付けなかった部分や思いもしなかった発想やテイストも活かして加味できるのがクリエイティブでおもしろい作品づくりに繋がると思い描いて臨んでいます。とはいえ、あちこちの意見に振り回されて監督がブレてしまうと、みんながどうしたらいいかと迷ってしまうので、早めに決断できるように努めています」
渋谷「自分のなかでは『さっきのでよかったのかな?』と不安になることもあるのですが、客観的な判断ができるのは監督やスタッフのみなさんなので、そこはお任せしていました。100%でぶつかってみてOKがでたら、『いまのでよかったんだ』って。でも、実際には作品が完成してみないとわからないですよね。それもまた映画のおもしろさで、埋めたタイムカプセルが掘り起こされるのを待っているような気分です」
「劇場の大画面と大音量で体験を共有する臨場感は格別。この夏の思い出にしてもらいたい」(清水)
――もうすぐ『あのコはだぁれ?』が公開になります。改めて、観客にはどんなところを楽しんでほしいですか?
清水「夏休み公開に向けて動きだした企画ということもあり、この夏休みになに観よう?と選んでもらえて、映画館で観て良かった!と今夏のゾクゾク涼しい、怖い思い出にしてもらえると幸いです。ほのか先生が受け持つ瞳という生徒を演じた早瀬憩さんが、いままでホラー映画は怖くて1本も観たことがなく、この現場に入る時に僕がオススメした作品を撮影中の待ち時間などにスマートフォンで観ていたんです。僕は、自分が薦めたとはいえ…『そっかスマホでかぁ…』と、とても歯痒くは感じていたんですが…。撮影が終わって、彼女は試しに…と映画館でホラーを観たそうなのですが、めちゃくちゃ怖かったようで、『スマホで観るのとは全然違った』と言っていました。
当然です!映画監督は画も音もすべてひっくるめて、映画館での上映で観ていただけるのを想定して作品を作っていますし、視聴と鑑賞は別物です。暗いなか…大画面と大音量で集中して見知らぬ人達と体験を共有する臨場感は格別で、スマホやテレビ、モニターで個々に自由に手軽に視聴するのとは同じ作品を観たとは言えないほど変わってきます。ホラーが好きな人はもちろん、苦手な人は苦手な人同士で誘い合いながら、劇場でこそ観ていただけるとうれしいです」
渋谷「劇場で観ていただきたいというのは本当にその通りです。365日あるなかの1日、数時間だけでも、映画館で“怖い”を全身で体感してほしいです。カップルで観に行ったら『キャー!』って驚くのをきっかけにくっついてくれたらうれしいし、一人で観に行ったとしても、スクリーンには誰よりも怖がっている私が映っているので安心してください!」
清水「『怖がっている私が映っているから安心して』…この理屈がよくわからないんですよね(笑)。渋谷さんらしくて、すごく優しいな…と思いますけど(笑)」
渋谷「『渋谷凪咲が主演?』と不安を覚える方もいらっしゃると思うのですが、清水監督には『渋谷凪咲がだんだんと君島ほのかに変わっていく、その過程を観客にも楽しんでもらいたい』とおっしゃっていただきました。私もそんな気持ちで演じさせていただいたので、夏の名物、日本の風情であるホラー映画を存分に味わっていただきたいです!」
清水「うまく相乗効果になるといいですよね。渋谷さんのファンだからと観た方がホラーにハマったり、ホラー好きの方が俳優としての渋谷さんに注目するようになったり。幅広く楽しんでいただければいいなと思います」
取材・文/平尾嘉浩
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