『呪怨』に憧れて上京し、映画監督に!Jホラーの“次世代”が清水崇監督と夢の対談「ようやく一歩踏みだせた」

インタビュー

『呪怨』に憧れて上京し、映画監督に!Jホラーの“次世代”が清水崇監督と夢の対談「ようやく一歩踏みだせた」

日本のホラー映画界の未来を背負って立つ新たな才能を発掘・育成していくことを目指し、大賞受賞者には商業映画監督デビューが確約される「日本ホラー映画大賞」。2021年に行われた第1回の大賞受賞作となった下津優太監督の『みなに幸あれ』は、この賞の選考委員長を務める清水崇監督のプロデュースのもとで長編リメイク版が制作され、先日プチョン国際ファンタスティック映画祭でメリエス国際映画祭連盟(MIFF)アジアンワード・ベストアジアフィルム(最優秀アジア映画賞)を受賞。2024年に予定されている劇場公開に向け、順風満帆のスタートを切った。

第1回以上に注目が高まるなか発表された「第2回日本ホラー映画大賞」の大賞に選ばれ、商業デビューを勝ち取ったのは、近藤亮太監督の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』。近藤監督は第1回の際に『その音がきこえたら』でMOVIE WALKER PRESS賞を受賞し、その後自ら「第2回で大賞を受賞する」ことを目標に掲げ『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』を制作。見事にその夢を叶えた。

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現在、EJアニメシアター新宿では、第2回受賞作の上映会が7月31日まで、第1回受賞作の上映会が8月1日(火)から8月3日(木)まで、連日19時より開催されている。そこでMOVIE WALKER PRESSでは、商業デビュー作を準備中の近藤監督と、選考委員長の清水監督にインタビューを敢行。

清水監督の代表作である「呪怨」シリーズから絶大な影響を受け、清水監督も輩出した映画美学校に入学し映画を学んできた近藤監督。映画美学校の、そしてホラー映画界の先輩後輩である両者の対談の模様を、たっぷりお見せしよう。

「観てくれる人が怖いと思えるものを目指した」(近藤)

――まず、授賞式を振り返ってみたいと思います。第1回の時には、事前にどの賞を受賞したのかお伝えしたうえで監督たちに授賞式に来場してもらいました。しかし今回は、清水監督たっての希望で「受賞したこと」だけを伝えて、具体的にどの賞なのかは現場で発表する形式となりました。大賞の発表は授賞式の一番最後。どんな心持ちで授賞式を見ていたのでしょうか?

近藤亮太(以下、近藤)「正直にいうと、自分の名前が発表されるまでは大賞のことを考えないようにしていました…(笑)」

――前回『その音がきこえたら』でMOVIE WALKER PRESS賞を受賞してから、今回の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』を作るに至るまでどんなプロセスがあったのでしょうか?

近藤「賞をもらったことで少し自信がついて、次は大賞を目指そうという気持ちで準備していました。前回の授賞式の直後から“神隠し”を描くことはすでに決めていて、どうすれば自分で出せる予算や限られた時間のなかで撮れるのかをかなり悩みました。それでいつもシナリオが書き上がると、師匠の高橋洋さんに送って読んでもらうのですが、一言も褒められなくて…。『ああ、終わったな』と思いました」

近藤監督が第1回日本ホラー映画大賞MOVIE WALKER PRESS賞を受賞した前作『その音がきこえたら』
近藤監督が第1回日本ホラー映画大賞MOVIE WALKER PRESS賞を受賞した前作『その音がきこえたら』


清水崇(以下、清水)「高橋さんの持ってる“高橋洋イズム”はかなり変わっていますからね(笑)。今回の応募作品のなかにも、そういう“高橋洋イズム”だとか、“黒沢清イズム”を完全に踏襲したような作品もあったんですが、そういう作品は結局誰かの模倣でしかない。独自のテイストに味付けし直せるなら別ですが。影響は受け、参考にはしつつも、根底はやはり自分の感性で映画を撮るのが一番だと僕は思いますよ」

近藤「そうですよね。だからちょっと不安になりながらも、とにかく怖いものを撮るんだと考えて撮影に臨みました。作品として上手くいくかということよりも、観てくれる人が怖いと思えるものを目指したんです。自分としては怖いものができたという自信はあったんですけど、いざ誰かに観てもらうとなると、やっぱり理解してもらえるのかどうかという不安は拭えなかったです」

清水「今後商業映画でやっていくとなると、そういうことはずっとあると思う。それこそ、いままで自由に作れたからできた部分ができなくなって、より窮屈に感じてしまったり。自由にやっていきたいと思うなら、もう“高橋洋イズム”のように突っ走るしかないかな(笑)」

近藤「あれは茨の道すぎますよ…(笑)」

清水「『ザ・ミソジニー』もすごい映画だったけど、高橋さんの映画はあの人にしか作れない…というか、発想そのものが独自の世界観ですからね」

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