次なる貞子、伽椰子となるか?新たなるJホラーのアイコンが誕生した『ミンナのウタ』の怖すぎる魅力
怖さが倍増…徐々に真実を明かしていく巧みな語り口
また、小森失踪の謎を解いていくミステリー的なエッセンスもあり、探偵の権田はカセットを逆再生にしてみたりと試行錯誤していく。聞き込みを行うなか、メンバーから語られる様々な視点の証言により、なんともないと思っていたスタジオでの練習で、ある異変が起こっていたり…と徐々に真実へと迫っていく展開も巧み。
過去に起きたとある女子中学生の怪死事件という新たな闇に行き着くにつれて恐怖も倍増。肌を掻く音などのさりげない環境音の数々が呪いのメロディーを紡ぎだし、「ミンナのウタ」というタイトルに帰結していく様は鳥肌ものだ。
純粋な邪悪…新世代のホラーアイコン、さなの存在感
そして本作を語るうえで忘れてはいけないのが、恐怖の元凶となる高谷さなというキャラクター。卒業アルバムの写真も一人だけ解像度が少し荒かったりと些細な点から恐怖が演出されているさなは、30年以上前に亡くなっている怨霊だ。
この手の怨霊のキャラクターといえば、つらい出来事など過去への“恨み”を持ち、いささか同情する点があるもの。本作でも物語が進むにつれて、さなのつらい過去が描かれていく…のかと思いきや、そんなことは一切なし。もともと動物を虐待したりと残酷でサイコパス気質のあるさなは、生き物の最期の音を集めており、その音で呪いのメロディーを作りだしていく。
「自分の歌で、みんなを私の世界に惹き込む」という純粋な欲求を満たすため、次々とGENERATIONSを自分の世界に惹き込んでいくさな。制服姿に黒髪おかっぱヘアという日本人のDNAに刷り込まれた恐怖を感じさせるルックも絶妙だ。そんな彼女がマイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」さながらに体を倒しながら階段を降りてくる、人間離れした動きはとにかく不気味だった。
少女”さな”による恐怖が再び描かれる『あのコはだぁれ?』
Jホラーや清水監督らしさと同時にフレッシュな描写や設定も随所に盛り込むことで、ケタ違いの恐怖を生みだした『ミンナのウタ』。そんな本作と同じ世界線で語られる新たな物語が『あのコはだぁれ?』だ。
学校の夏休みを舞台にした本作は、男女5人が補習授業を受ける教室で、いないはずの生徒が巻き起こす怪奇を描く学園ホラー。臨時教師として補習クラスを担当することになった君島ほのか(渋谷凪咲)の目の前で、ある女子生徒が突如屋上から飛び降り、死んでしまう。いないはずの生徒の謎に気がついたほのかと補習を受ける生徒たちは、やがて“あのコ”にまつわる衝撃の事実を知ることに。
本作でも“さな”という名の少女が登場するようだが、はたして関係は…?アッと驚く結末は、ぜひ劇場で確かめてほしい。
文/サンクレイオ翼