能力者の生まれる町、人喰いの村…ディズニープラスで見られる変わった村や街、集めました
どこか違和感が拭えないシットコムの世界「ワンダヴィジョン」
最後に紹介するのは、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のドラマシリーズ「ワンダヴィジョン」。主人公は強力なテレキネシスにバリア、マインドコントロールを使うことができるアベンジャーズの1人、ワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)。「計算サービス社」に務める夫のヴィジョン(ポール・ベタニー)と共にウエストビュー郊外の街に引っ越してきた彼女が、日々の家事や少しお節介なご近所さんとの交流に悪戦苦闘しながら“普通”の人間の暮らしに溶け込もうとする。
エピソードごとに作品の雰囲気がガラッと変わる本作。シチュエーション・コメディ、所謂シットコムな世界なのは共通しているものの、「奥さまは魔女」「フルハウス」といった1960年代、70年代、80年代、90年代それぞれでヒットしたホームドラマのように日々の営みが展開されていく。そのなかでワンダが妊娠したり、双子が生まれたり、子育てに奮闘したりと、ありふれた日常が映しだされている。
一方で、“普通”とは思えないことも。いくらシットコムとはいえ町の外がまったく登場しないのは不自然で、普段は気さくに振る舞っているご近所さんや計算サービス社の上司、同僚たちが、突然謎めいた言動をしたり、動きが止まったり、なにかから逃げようとする不可解な現象も発生。そういった場面に出くわすとワンダやヴィジョンも戸惑ってしまうが、そもそも『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)におけるサノスとの決戦の末にヴィジョンは死亡したはず。だとすれば、ここにいるヴィジョンは何者なのか?一見平和そうに見える町だが、どこか違和感を覚えずにはいられない…。マーベル・スタジオ初のドラマシリーズとして注目を集めた本作は、回を追うごとに伏線を回収しながら、街の真実が明らかとなる脚本の秀逸さが高い評価を集めておりMCUファンもそうでない人も、楽しめる一作だろう。
本作に登場した魔女、アガサ・ハークネス(キャスリン・ハーン)を主人公とした最新ドラマシリーズ「アガサ・オール・アロング」も9月19日(木)より配信予定なので、あわせてチェックしてみては?
小さなコミュニティで暮らし、その場所独自のルール、因習に縛られた住人たちの姿も描く「七夕の国」をはじめとするこれらの作品たち。どれだけ国が法律やルールを整備したとしても、結局、人にとって重要なのは自身が生活するエリアにいかにうまく溶け込み、周囲との良好な関係値を築いていけるか、なのかもしれない。SNSなどのツールが発達する一方、リアルな生活圏内での人間関係が希薄となりがちないまの時代だからこそ、鑑賞してみてほしい。
文/平尾嘉浩