世界で驚異的ヒット!ピクサーのCCO、ピート・ドクターに『インサイド・ヘッド2』成功の要因を聞いてみた
2015年に日本でも人気を博したピクサー・アニメーション・スタジオの『インサイド・ヘッド』。9年ぶりとなる続編『インサイド・ヘッド2』(8月1日公開)は、公開直後から世界各国で大ヒットとなり、アニメーション史上歴代No.1オープニング&ピクサー史上最高の世界興行収入を記録していたが、ついにあの『アナと雪の女王2』(19)を超え、14億6200万ドル(2245億円)を突破。アニメーション映画史上世界No.1の歴史的快挙も達成した。日本でも期待が高まるなか、1作目で原案・監督・脚本を手掛け、今回の続編では製作総指揮を務めたピート・ドクターが来日し、インタビューに応じた。
「まさかピクサー史上最高のヒットとなることは予想していなかったです(笑)」
現在、ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、つまり製作陣のトップの肩書きを持つドクター。ピクサーの長編アニメーション第1作『トイ・ストーリー』(95)に関わり、監督としては『モンスターズ・インク』(01)、『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)、『ソウルフル・ワールド』(20)といった名作を送りだしてきた。そんな彼にとって、『インサイド・ヘッド2』の特大ヒットは予想できていたことのなのか。そのあたりから質問をぶつけてみた。「前作を多くの人が気に入ってくれたので、今回も映画館に足を運んでくれると期待はしていました。でもまさかピクサー史上最高のヒットとなることは予想していなかったです(笑)。冷静に分析した時に一つ目の理由として挙げられるのが、前作の人気。そして第2の理由は、本作のシンパイというキャラクターが多くの人の心に響いたことでしょう。人間には常に心配が付き物。特にいまの時代は、メディアやSNSが不安を煽り、世界の情勢も不安定なので、シンパイの部分に共感する人がたくさんいたのかもしれません」。そうドクターが語るように、『インサイド・ヘッド2』にはシンパイのほかに、ハズカシ、イイナー、ダリィといった新たな”大人の感情”キャラクターが登場。さらに広い層にアピールする魅力が生まれたのかもしれない。
ドクターが監督を務めた『ソウルフル・ワールド』や、『私ときどきレッサーパンダ』(22)、『マイ・エレメント』(23)など、このところピクサーは新たなオリジナルストーリーの作品が続いていた。続編、あるいはシリーズものを製作するのは、『トイ・ストーリー4』(19)以来、5年ぶり。なぜ『インサイド・ヘッド』に決めたのだろう。「たしかにここ数年、オリジナルの作品が多かったですね。個人的にもオリジナルの物語が好きですし、スタジオとしても、シリーズとオリジナルの両方をバランスよく観たいという観客の志向を意識しています。『インサイド・ヘッド』の場合、前作を作った時、続編のことは一切考えていませんでした。ただ多くの人に愛され、新たな物語の可能性が話し合われるようになったのです。続編を作るポイントとして最適な例が『トイ・ストーリー』でしょう。出てくるキャラクターに、新しい感情を掘り下げられるポテンシャルが高いのです。もちろん彼らは私たちが創造したわけですが、そこに生きているように自立し、奥行きが出れば出るほど、続編は作りやすくなります」。