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三木孝浩監督が明かす『インサイド・ヘッド2』と青春映画作りの共通点「ネガティブな感情を大事に描いている」

インタビュー

三木孝浩監督が明かす『インサイド・ヘッド2』と青春映画作りの共通点「ネガティブな感情を大事に描いている」

「“これはあの時の俺だ!”と自分の思い出とシンクロするようなシーンを作りたいんです」

ライリーを守るため、大人の感情たちが大奮闘(『インサイド・ヘッド2』)
ライリーを守るため、大人の感情たちが大奮闘(『インサイド・ヘッド2』)[c]2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

前作のファンにとってはなじみ深い頭の中の世界だが、映像的な見どころについても語ってもらった。「前作でも心くすぐられましたが、本作にも3Dアニメーションに急に2Dのアニメが出てきたりして、その雑なポリゴン風の、ちょっとマットな感じのするキャラも大好きでした」と、遊び心にあふれる映像表現に再び魅せられたようだ。しかも「ピクサーのすばらしい技術ゆえでしょうが、すべてのキャラクターの表情が本当に豊か。例えばライリーの複雑な表情を見ているだけで、いまライリーの脳内でどの感情がどんな動きをしているのか、想像できるくらいに表現されているのは本当にスゴイ!」と手放しで褒め称える。

また青春映画を多数手掛けて来た旗手として、「本作にも通じますが、僕は常に“これはあなたの物語です”と自分事として捉えてもらえるといいなと思って作品を作ってきました」とこだわりを語る。「例えば恋愛映画でも、キャラクターが誰かを好きになった瞬間に、観客も同時にその相手を好きになってしまうカットを撮りたい。説明ではない物語づくり、画作りを目指しています」と明かしてくれる。「“これはあの時の俺だ!”と自分の思い出とシンクロするようなシーンを作りたいんです」。

「自分の“思い出ボール”を取りだして、シーンを作っていく」と、作品づくりへのこだわりを語る三木孝浩監督
「自分の“思い出ボール”を取りだして、シーンを作っていく」と、作品づくりへのこだわりを語る三木孝浩監督撮影/杉映貴子 ヘアメイク/上原幸子 スタイリスト/内田あゆみ(creative GUILD)

それを可能にしているのは、「自分の“思い出ボール”を取りだして、それをベースにシーンを作っていく」から。そんな時も「ネガティブな感情を大事に描いています。というのも、例えば誰かを好きになると、不安や心配が膨らむものですよね。そのネガティブな感情とどう向き合うかを、僕はずっと恋愛映画の中で描いている気がします」と、本作のテーマと重なる自身の命題にも話は及んだ。そんな三木は「本作にあえて苦言を呈するなら、恋愛要素がなかったこと。この年ごろといえば、やっぱり恋愛は大事です!僕自身は恋愛ベースで思春期があったので(笑)。それはあるかもしれない続編に期待します。きっと“自己嫌悪”あたりの感情が新たに登場するのかな」とうれしそうに推測する。


最後に、三木自身のベースとなる“思い出ボール”を一つ取りだしてもらった。「小学2年生の時、人気アイドル女優だった原田知世さん似の女の子に初恋をしたんです。でも転校してしまって…。そうしたら中学の時に戻って来たんですよ。しかも同じクラスの隣の席になって」と出来すぎた運命のアシストが!「少女マンガが始まりそうなシチュエーションまでお膳立てされたのに、なにも起きなかった。なにも出来なかったその時の後悔が、いまのクリエイティブな欲求につながっています(笑)」。いま、三木監督作に胸がキュンとなるのは、そんな甘酸っぱい“思い出ボール”があったおかげかもしれない。ライリーの恋バナはお預けだが、本作から放たれるエールは若者のみならず観る人すべてを幸せに、そして背中を押してくれるはずだ。

取材・文/折田千鶴子

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■三木孝浩
1974年生まれ、徳島県出身。映画監督・映像ディレクター。2010年に『ソラニン』で長編映画を初監督。主な監督作に『ホットロード』(14)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(20)などを手掛ける。近作は『今夜、世界からこの恋が消えても』『TANG タング』『アキラとあきら』(すべて22)ほか、Netflix映画『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』が世界独占配信中。待機作に『知らないカノジョ』(2025年2月28日公開)が控える。

■衣装協力
衣装:Nilway/株式会社ブリックス(0166-74-5560)
靴:Alden/ラコタ(03-3545-3322)

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