梨×近藤亮太が語り合う「行方不明展」の真意。“5つ目の展示物”「正体不明」とは?
「この世界観を伝えるためには、どうしても“物語”が必要だった」(近藤)
「行方不明展」の展示は4つのセクションに分類されている。「ひと」の行方不明をめぐる“身元不明”。「場所」の行方不明をめぐる“所在不明”。「もの」の行方不明をめぐる“出所不明”に、「記憶」の行方不明をめぐる“真偽不明”。そしてここに、特別配信映像というかたちで、いわば5つ目の展示物が加えられるわけだ。
そのタイトルは「正体不明」。「行方不明展」の会場で出会った2人の男の対話によって構成された約30分の映像は、梨が語っていた“スペキュレイティブ・フィクション”としての世界観をさらに強化していく。これを手掛けたのが、短編映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』で第2回日本ホラー映画大賞に輝き、同作の長編版で商業映画監督デビューを控えている近藤亮太監督だ。
「『行方不明展』の世界観の一部として映像を作ってほしいとお誘いをいただいた時に、真っ先に考えたのは『花火大会に行けなかった人に、その楽しさや思いを伝える時には、花火をそのまま撮っても伝わらない』ということでした。この展示、この世界観を伝えるためには、どうしても“物語”が必要だったのです」。そう語る近藤監督は、小林泰三の短編小説「酔歩する男」や黒沢清監督の『CURE』(97)などをイメージソースとして作品づくりに臨んだという。
そんな近藤監督の才能に兼ねてから惚れ込んでいたという梨は、「先ほども話したように、ホラーであることを想定している展示会ではないので、恐怖表現が可能な範囲は限られていたと思います。ですが近藤監督は、その無理難題のなかでも見事に広義の不気味さというものを表現してくれました」とあたたかな賛辞を送る。
「近藤監督には『正体不明』だけでなく、『行方不明展』の最初の情報として出されたCMも制作していただきました。つまりプロローグとエピローグの両方を任せるという、かなりの重荷を背負わせてしまったかもしれません。ですが、独特の緊張感がある画づくりで、ずっと背筋が伸び続けるような無二の感覚を味わわせていただき、なにより世界観の幅をさらに拡張してもくれました。あらゆる面で寄与していただき、お願いして本当に良かったと思っています」。
梨からの言葉に、「非常に難しいオーダーではありましたが、僕自身が梨さんの作品から影響を受けているということもあり、僭越ながら恐怖の感覚値が近い方だと思っていたんです」と近藤監督は照れたような表情で告白。そして「自分が好きでやりたい表現と企画と、一緒に作るクリエイターの意向が合致しながら作品づくりができる、とても幸せな作業でした」と、梨との充実したコラボレーションを振り返った。
場所:三越前福島ビル
住所:東京都中央区日本橋室町1-5-3 三越前福島ビル ※東京メトロ「三越前駅」徒歩2分
開催期間:〜9月1日(日) 11時〜20時 ※最終入場は閉館30分前
※観覧の所要時間は約90分
料金:2,200円(税込)
公式サイト:yukuefumei.com
公式X:@yukuefumeiten