黒沢清監督&菅田将暉が語り合う、“一途“な悪人像「自然とやれる怖さも感じた」【『Cloud クラウド』公開記念インタビュー特集】 - 4ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
黒沢清監督&菅田将暉が語り合う、“一途“な悪人像「自然とやれる怖さも感じた」【『Cloud クラウド』公開記念インタビュー特集】

インタビュー

黒沢清監督&菅田将暉が語り合う、“一途“な悪人像「自然とやれる怖さも感じた」【『Cloud クラウド』公開記念インタビュー特集】

「社会的なテーマのために作っていないので、娯楽映画として楽しんでほしい」(黒沢)

――共演者の方々についても伺わせてください。撮影の合間等々、どんな話をされたのでしょう。

菅田「赤堀雅秋さん、荒川良々さんが中心になってご飯に誘ってくれたり、交流する機会を作ってくれました。窪田正孝くんとがっつりお芝居をしたのは今回が初めてですが、お互いにボクシングをしているのでその話をしました。窪田くんは『こんな方なんだ』とおもしろかったです」

黒沢「本当に楽しい方でしたよね。絶好調でした。今回の現場で、一番明るかったのではないかと思います」

菅田「まさにその表現がぴったり来ます。絶好調なのに、2人でしゃべっている時に急にまじめなことを言いだすからちょっと怖かったです(笑)」

現場の様子を笑顔で語る2人
現場の様子を笑顔で語る2人撮影/湯浅 亨

――となると、本番になるとパッと役に入るような形だったのでしょうか。

黒沢「そうですね。そこはやはり俳優ならではでした。芝居中は集中して、カットがかかるや否や戻るといったような感じでしたが、僕としては助かりました。特に後半は殺すか殺されるかといったハードなことをやっているので、窪田さんが陽気に振る舞ってくれて現場は救われていました」

菅田「僕は窪田くんほどパッと切り替えられなかったので、なだらかに入って戻ってを行っていました。今回は自分で決めこんだりせず、現場で黒沢さんの演出のもと芝居をしていくなかで見えるものがたくさんあった――という形でした。毎回出てくるアイデアが楽しくて、味わっているうちに終わっているような感覚でした」

吉井に雇われたバイトの青年、佐野役を演じた奥平大兼
吉井に雇われたバイトの青年、佐野役を演じた奥平大兼[c]2024 「Cloud」 製作委員会

――後半に行くにしたがって、吉井と奥平大兼さん演じる佐野の間には奇妙な関係が築かれていきますね。

菅田「飄々としていて、拳銃を一番使わなさそうなのに堂々としている感じが役と合っているように感じました。あと、奥平くんの私服が印象的でした」

黒沢「そうなんです。独特の服装をしているから、僕のような素人は正直、最初は『なにを着てるんだ?』とぎょっとしました」

菅田「元々服飾系のお仕事を目指していて、服作りが好きと聞きました。でも、黒沢さんがおっしゃることもわかります。全身グリーンのセットアップで、枝豆を着ているような日もありましたから(笑)。個性がにじみ出ていました」

黒沢「『そんな衣装用意したつもりはないぞ!?』と慌てました(笑)」


――最後に、テーマ性についても伺えればと思います。転売屋という設定以外にも「生活をよくしたい」と思う若者たちの“困窮”に現代的なエッセンスを感じたのですが、こうした現代社会とのリンクについてはいかがでしょう。

黒沢「実際の事件がヒントにはなりましたが、社会的ななにかをテーマにするために作った映画ではないため娯楽映画として楽しんでいただければうれしいです。ただ、現代を舞台にした映画である以上、現代のなにかを反映していることは間違いないとも思います。ねらってそうしたわけではないのですが、『ごく普通に生きている人たちが最終的に殺し合いにまで発展する』という流れを考えると、かかわる人たちはどこかギリギリのところにまで追い詰められているはずで、貧しさが一つの要因になったところはありました。吉井だっていい大学を出ていい仕事に就けていれば転売をする必要はなく、どこか必要に迫られて『この道で生きていこう』となっていった人ですから。それぞれに切迫した人生を送る人たちが激突せざるを得なくなった――というのが自然な流れとしてあったように思います」

『Cloud クラウド』は9月27日(金)公開!
『Cloud クラウド』は9月27日(金)公開![c]2024 「Cloud」 製作委員会

菅田「いまの日本は大まじめに『これはファンタジーだよね』とはもう誰も言えないのではないかと思います。ここまでいかなくても、日々生きていて人間関係が一番怖いなと思うこともあるし、自分自身も怖いことを思ってしまったなと思うこともあるので、やっていて違和感を覚えることはありませんでした。違和感を持つべきだとも思いながら自然とやれてしまっている怖さも同時に感じていました。

ただ、本編を観て僕はいままで自分が出た映画で一番笑いました。娯楽としては本当に楽しかったのですが、家に帰ってから現実にかえって『俺、笑ってよかったのかな…』とへこむ自分もいて、そういった部分に現代社会との関係性を感じました」

【次回予告】第4回では『Cloud クラウド』と過去作の接点が明らかに?黒沢監督の「源流・原点」をテーマにしたインタビューを掲載します

取材・文/SYO

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