ゆる~い殺し屋コンビ”ちさまひ”の絆が胸を打つ『ベイビーわるきゅーれ』心わし掴みシーンを語る
腕利きの殺し屋だが、社会になじんで普通に暮らすことは苦手なちさと(高石あかり)とまひろ(伊澤彩織)の、ゆる~い日常と”仕事”の様子を描き人気を集める「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ。『最強殺し屋伝説国岡[完全版]』(21)や『グリーンバレット』(22)などの若手監督、阪元裕吾の完全オリジナル作品として、2021年に第1作『ベイビーわるきゅーれ』が公開。ハイレベルなアクションシーンなどが海外からも評判を集め、2023年には第2作『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が公開された。
「ベビわる」旋風は勢いを落とすことなく、早くも第3作『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が公開。さらに、映画の公開に先駆けて、9月4日からはシリーズ初の連続ドラマとなる「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」が放送されている。
そんな「ベビわる」の魅力といえば、”殺し屋”という題材からは想像できないようなゆるい日常、本格アクション、クセ強なキャラクターなど様々あるが、忘れてはならないのは、メインの2人”ちさまひ”こと、ちさと&まひろの強い絆。仕事が終われば「はい、お疲れぃ」とラフに挨拶を交わし、家に帰れば同じ釜の飯を食う。時にぶつかることもあるけれど、それでも切れることのない絆。仲間であり、親友であり、家族であるちさととまひろのシスターフッドに心を大きく揺さぶられる。本稿では、最新作公開を迎えた本シリーズの”ちさまひ”の絆を感じられるシーンを紹介していこう。
ちさまひが大喧嘩!?アルバイト探しに奔走する『ベイビーわるきゅーれ』
第1作では、女子高生殺し屋2人組として暗躍してきたちさと&まひろが、高校卒業と同時に普通の社会人として生きていくように、と組織に告げられるところから始まる。駄々をこねる2人を横目に組織は容赦なく寮から2人を追いだし、かくして2人の”普通”奮闘記が始まるのだった。1つ目の”絆シーン”は、本編冒頭にてどうにかコンビニの面接にこぎつけたまひろが面接を終えたあとにある。
コミュニケーションが苦手なまひろが、ちょっと鬱陶しい店長の面接をどうにかしたあとに”ひと仕事”終えた2人の交流シーンからは、ちさととまひろが普段どういった関係性なのかが見て取れる。ピンチに瀕しつつも、すんでのところでレジの下に隠れていたちさとに助けられたまひろは、不服そうな顔を浮かべつつも、両手を広げてちさとの顔を見る。するとちさとは、「はいはい」とでも言わんばかりに、その手を取ってちさとを立たせる。その後は先ほどまで対峙していた店長の愚痴など、なんてことのない会話でひとしきり盛り上がり、お互いの目を見て笑い合う――このたった数分で、2人はどんな性格なのか、2人がどれだけ信頼し合っているのかがよく伝わり、「ベビわる」ワールドに一気に引き込まれてしまう。
2つ目は、まひろのちさとへの強い想いが伝わるシーンだ。「普通に生きていく」ということに四苦八苦するなか、ある日まひろは泣きそうな顔を浮かべながら蚊の鳴くような声でちさとにこう告げる。「あたし、ちさとと一緒のバイトとか、やっちゃったりとかしたらダメかな」「ちさととなら苦手なこととかでも頑張ってみれるかもしれないから」。フィジカルが自慢で肉弾戦を得意とし、仕事では頼もしさ抜群のまひろの弱々しい姿や、ちさとを信頼しきり、ちさとならなんとかしてくれる、と信じているのであろう様子に心を揺さぶられる。
しかしこれがきっかけで、彼女たちは大喧嘩に至ってしまう。共に面接に向かった新たなバイト先で、早々になじむちさとと、輪に入れず黙って1人帰路につくまひろ。バイトへの考え方をめぐって激しい言い合いになり、コンビ解散の危機に。意地を張って嫌味をぶつけ合う2人からは、なによりも”普通の若い女子らしさ”が感じられるが、一触即発の空気にヒヤヒヤ。その後紆余曲折を経て、先に言いだしたまひろからきちんとお詫びするのだが、お詫びと共に「社会とかにはなじめないしなじみたくないし…だけど、これからちさととは向き合っていけたらなと思ってるんです、わりと大事な人だから」という言葉をちさとに贈る。どこまでもまひろがちさとを信じきり、まひろのなかでちさとの存在があまりにも大きすぎることが伝わり、絆の強固さに圧倒される。
最後は、仲直りして元の調子に戻った2人だからこそのシーン。身内を殺されたヤクザに呼びだされたちさとは、向こうの本気度に1人では勝てないと察したのか、まひろに上目遣いを浴びせながら「ヤクザ殺しに行くの手伝って!」とお願いする。チャーミングな顔を浮かべるちさとを見たまひろは、呆れているように見えつつも、どこかうれしそうに「1回だけだよ」と受け入れ、2人は銃を手に取り約束の場所へ向かうのだった。アルバイトの際は、まひろがちさとにお願いする側だったが、今度はちさとがまひろにお願いする側。まひろがちさとを信用しきっているのと同じように、ちさともまひろを信じている。やはり2人は、2人だからこそ強いのだと実感させられるシーンだ。