——思い出に残っているシーンはありますか?
黒木「いっぱいありますね、どれかな」
中村「最後のほうに出てくる、梓が澄人に体を預けるシーンかな」
黒木「寄りかかるシーン!」
中村「監督がカメラを覗きながら、もうちょっと離れたところから(倒れてみて!)って言うから、黒木さんがどんどん離れていって…。そんなに離れて僕のほうに背中を向けたまま倒れ込んでくるのって、大丈夫かな?って思いました」
黒木「このくらいならいけるかな、みたいな感じでした」
中村「すごく男前な感じで、スッと後ろ向きで倒れてきて(笑)」
黒木「それは多分、信頼していたからイケるって思ったのかと(笑)。私は、小銭を落とすシーンとか、ちょっとしたもので澄人の人柄が見えるのがなんかいいなと思っていました。そういう何気ないシーンって塩梅が難しいじゃないですか。最初に出てくる突っ張り棒のシーンも監督が『これは絶対にやりたい』と。こんなちっちゃいところから物語が始まってつながることが、なんか意外だったらしくて。とても小さなことだけど、こういう澄人の抜けたところが梓の拠り所になっているというのを、見ていてもやっていても感じることができました。何気ないステキなシーンはたくさんありますね」
——ちょっぴり間が悪い、抜けているところがありつつも、火事のシーンでは頼り甲斐のある姿を見せるところもあって。
中村「たくましいシーンでしたよね」
黒木「煙とかもすごかったので、結構危ないシーンでした」
中村「煙、結構すごかったですよね」
黒木「『みんな大丈夫?』とお互いに気にし合いながらの撮影でした」
「いまはあまり使われていない、馴染みのない言葉だけど、すごくステキな言葉だと思いました」(中村)
——映画のタイトルにもなっている、“相身互い”の意味にも「なるほど」と。お2人はこの言葉はご存知でしたか?
黒木「聞いたことなかったです」
中村「僕もなかったです」
黒木「最初に見た時はカタカナで書かれていたので、まずどういう読み方をするんだろう?というのが第一印象でした。どこで区切って、どういう意味のある言葉なのか、まったく想像ができませんでした」
——お2人は知らない言葉に出会った時、すぐに調べたりするタイプですか?今回は演じることもあって、脚本や原作で読んで知ろうという感じだったのでしょうか?
黒木「普段の読書とかであれば調べます。今回は、まず脚本を読んでみようと思いました。読んだことで、だからこのタイトルなんだなってすごく納得できたというか。カタカナであることにも意味があるのかなとか、いろいろな想いを感じることができました」
中村「僕も最初に聞いた時は、どういう漢字で書くのかなって思って。原作を読んでから脚本を読んだので、脚本を読む時には言葉の意味は知った状態でしたが、『なるほど』という感じで読み進めました。いまはあまり使われていない、馴染みのない言葉だけど、すごくステキな言葉だと思いました」
——“相身互い”という言葉の意味を知って、どのように感じましたか?
中村「絶妙な意味だなと。助け合いというのもちょっと違う。劇中で祖母役の風吹ジュンさんがおっしゃっていたように、見返りを求めないことでもある。意味ははっきりしているけれど、(必ず自分のもとへ巡ってくる保証はないという)どこか曖昧な感じがすごくいいなと思いました」
黒木「私は、この現象に言葉があったんだというのが最初の感想でした。人って一人ではなにもできないけれど、どこかでなにかがつながっている。誰かの行為がまわりまわって自分の元に戻ってくることは結構あると思っていて。それが“相身互い”ってことだったのかと。知らないところで自分の作品が誰かに影響していたり、逆に誰かの感想が巡り巡って私の元に届いて力になったりすることもあります。知らないところで関わっていたというのは、作品を通して以外でもよくあることだかから、この現象に言葉があったことを知って、すごくスッキリしました(笑)」