最初から語り直すからこそ、初心者も楽しめる!『トランスフォーマー/ONE』“王道”が詰まった物語の魅力
実写映画全7作が世界で大ヒットを記録した、「トランスフォーマー」シリーズの最新作『トランスフォーマー/ONE』(公開中)。9月20日に日米同時公開されると、レビューサイト「Rotten Tomatoes」の一般鑑賞スコアは98%(9月26日時点)、公開に先立って行われたファンスクリーニングでも、終了後のアンケートで満足度100%(※ファンスクリーニング アンケート調べ)と、その圧倒的なクオリティに大きな評価を受けている。長年続くシリーズで、とりわけ本作が高い評価を得る理由はどのような点にあるのだろうか?本稿では、シリーズ初心者に向けた『トランスフォーマー/ONE』の魅力を紹介していこう。
シリーズの知識は不要!王道が詰まった“はじまりの物語”
本作が多くの反響を呼んでいるポイントとして、まずこれまで制作されたアニメ版や実写版などすべての「トランスフォーマー」のなかで最も過去、つまり“はじまりの物語”を描くことで、シリーズの知識がまったくない状態でも素直に観ることができることだろう。ここに、長年ピクサー作品にストーリーボードアーティストとして参加してきた、ジョシュ・クーリー監督の物語の構成と演出が加わることで、シリーズの魅力を損なうことなく大きな評価を生み、これまでシリーズに触れたことがないような若い世代にも受け入れられるクオリティとなっているのだ。
クーリー監督は、ピクサー仕込みのストーリーテリング能力を活かし、「変形するロボットによるアクションバトルもの」という印象が強い「トランスフォーマー」シリーズの“原点”となるエピソードを構築。現実世界の差別や閉塞感、外の世界に対する夢や希望、そしてその世界でどのように生きていくべきかというような、等身大の人間が抱くような要素をトランスフォーマーの世界に落とし込み、良質なバディムービー的なテイストに仕上げている。
そして、この物語上の重要な要素となるのが、主人公であるオライオンパックスとD-16の友情と離別にある。オライオンパックスは、のちに“トランスフォーマーといえば、このキャラクター”と言われる正義の陣営のオートボットのリーダー、オプティマスプライムとなるキャラクターだ。そして、オライオンパックスの親友であるD-16は、のちにオートボットと敵対するディセプティコンを指揮し、オプティマスと骨肉の争いを繰り広げるライバル、メガトロンとなる。かつての大親友がどのような道を辿って、宿命のライバルとなっていくのか?
大親友だった2人の友情と離別がエモい!
物語は、オライオンパックスとD-16が、故郷であるサイバトロン星の地下にあるアイアンコンシティで、彼らの生活に不可欠な「エネルゴン」と呼ばれる物質の採掘の従事する労働者として働く状況から始まる。オライオンパックスは好奇心旺盛で無茶と言えるほど挑戦的な性格であり、一方のD-16は規則正しくルールに従順という真面目な性格。その好奇心から様々なトラブルを起こしがちなオライオンパックをD-16がいつも手助けしている関係だが、そこには深い友情と信頼関係が存在していた。
ヒーローに憧れ、サイバトロン星の英雄の歴史に興味を持つオライオンパックスは、無茶な行動をしながら過去のデータを漁るなかで、地上世界に「プライム」たちの痕跡があると考え、D-16と共に地表へと向かうことを決意する。ここから物語は、オライオンパックスとD-16が共に困難を乗り越えていくバディ的な表現と、アイアコンシティに存在する一見平和に見えながらも、絶対的な格差が存在するディストピア的なテイストが少しずつ解き明かされるという2つのスタイルで進んで行くことになる。
さらに、途中からはのちのバンブルビーとなるB-127や、エネルゴン採掘チームでオライオンパックスの所属する採掘チームの女性リーダーだったエリータが加わり、サイバトロン星の隠されていた真実が明かされるというスケールの大きな物語へと進んでいく。
冒険活劇としてのおもしろさを基本としながら、親友同士であるオライオンパックスとD-16が、困難の時は助け合い、共に新たに知る事実や経験に一喜一憂する姿は、のちの2人に決定的な決裂が待っていることを知りながら観ていくと、単なる勧善懲悪を越える考え方の違いによるすれ違いの悲しさが、ある種の情緒となって胸に迫る。“永遠の親友”でありながら宿敵となる姿は、「呪術廻戦」で思想の違いから相対してしまう五条悟と夏油傑や、「NARUTO-ナルト-」におけるナルトとサスケの関係とも重なって見える、激アツでエモい関係性が生みだされているのだ。