青島と出会い、警察組織を変えようとした室井慎次…「踊る大捜査線」シリーズで描かれた葛藤と最新作の状況を整理|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
青島と出会い、警察組織を変えようとした室井慎次…「踊る大捜査線」シリーズで描かれた葛藤と最新作の状況を整理

コラム

青島と出会い、警察組織を変えようとした室井慎次…「踊る大捜査線」シリーズで描かれた葛藤と最新作の状況を整理

室井慎次 敗れざる者』(公開中)と、『室井慎次 生き続ける者』(11月15日公開)の2部作で12年ぶりにスクリーンに帰ってくる「踊る大捜査線」シリーズ。とはいえ1998年から2012年までに作られた4本の「踊る大捜査線 THE MOVIE」をシリーズの本線とすれば、これは映画の『交渉人 真下正義』(05)や『容疑者 室井慎次』(05)、テレビスペシャルの「逃亡者 木島丈一郎」(05年放送)、「弁護士 灰島秀樹」(06年放送)などの路線に連なるスピンオフ作品“踊るレジェンド”ものの最新作である。

12年ぶりにスクリーンに帰ってくる「踊る大捜査線」シリーズの最新作『室井慎次 敗れざる者』
12年ぶりにスクリーンに帰ってくる「踊る大捜査線」シリーズの最新作『室井慎次 敗れざる者』[c]2024 フジテレビジョン ビーエスフジ 東宝

所轄の刑事、青島俊作とキャリア官僚、室井慎次とのドラマを描いてきた「踊る大捜査線」シリーズ

主人公は、柳葉敏郎演じる室井慎次。1997年に最初のテレビシリーズが始まった「踊る大捜査線」は、基本的なストーリーは事件の謎解きをしていく刑事ものだが、警察庁、警視庁で事件を指揮するキャリア官僚と、所轄の警察署で実際に捜査する刑事たちとの衝突を描き、風通しが悪い警察組織の縦割り社会を映しだしたところが画期的だった。

所轄の刑事、青島俊作との関係性がドラマの軸に(「踊る大捜査線」)
所轄の刑事、青島俊作との関係性がドラマの軸に(「踊る大捜査線」)[c]フジテレビジョン

このドラマで所轄の刑事を代表するのが湾岸署で働く主人公の青島俊作(織田裕二)なら、キャリア官僚の“顔”として登場するのが室井慎次(初登場時は警視庁刑事部捜査第一課の管理官)。テレビドラマの第1話で、脱サラして交番勤務から念願の刑事になった青島の、特捜本部での初仕事が湾岸署に臨場してきた室井の運転手だった。

当初の室井は所轄の現状を知らず、刑事たちを手駒のように扱う人物だった(「踊る大捜査線」)
当初の室井は所轄の現状を知らず、刑事たちを手駒のように扱う人物だった(「踊る大捜査線」)[c]フジテレビジョン

はじめは所轄の現状を知らず、刑事たちを手駒のように扱う室井だが、自分の正義感に忠実な青島の熱意ある行動に触れ、やがて彼と心を通わせるようになる。そして最終回で、室井は「捜査から政治を排除して、所轄と本庁の壁を取り払って、捜査員全員が信じたことをできるようにしたかった」と警察組織に関する自分の夢を青島に語り、青島もそのために組織のなかであなたはトップになってくれと、室井に希望を託した。同じ理想を共有した2人の、警察組織を変えるという約束。それがどのように果たされていくかが、以降の「踊る大捜査線」シリーズ全体の大きなテーマになっていった。

互いを理解し合い、警察組織を変えるという約束を交わした室井と青島(「踊る大捜査線」)
互いを理解し合い、警察組織を変えるという約束を交わした室井と青島(「踊る大捜査線」)[c]フジテレビジョン

理想的なリーダーとして組織を率いた『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』

踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(03)では、湾岸署管内で連続殺人事件が発生する。犯人はリストラされたサラリーマンたちで構成された命令系統が存在しない個人の集団で、事件をトップダウンの指揮系統を駆使して解決しようとする管理官、沖田仁美(真矢ミキ)の方法論が通用しない。これに対して、後半で室井が彼女に代わって事件捜査の指揮を執るが、彼のやり方は所轄の刑事それぞれの情報を、役職や階級も無視してフルに活用していくというもの。現場の捜査員を信頼して行動するリーダーの室井を中心とする“組織”と、“個人”の集まりである犯罪者の戦いが描かれた。事件解決後、青島が放つ「リーダーが優秀なら、組織も悪くない」というセリフは、2人が理想に向かって一歩進んだことを思わせた。

「レインボーブリッジ封鎖できません!」の名台詞が有名な『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』
「レインボーブリッジ封鎖できません!」の名台詞が有名な『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』[c]2003フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー


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