「となりのMr.パーフェクト」で現代女性の苦悩と強さを体現!開花したチョン・ソミンのコメディエンヌとしての才能
下女や暗殺者、名家の娘も!難役をこなした「還魂」
「となりのMr.パーフェクト」でも見せたコメディの才能と、努力に支えられた確かな演技力、持ち前の可愛らしさで今やチョン・ソミンは多くのドラマファンから熱視線を浴びている。特に名前が知られたのは、「還魂」のシーズン1だった。架空の国・大湖国を舞台に、魂を入れ替える禁術「還魂術」によって暴走した者たちから国を守るチャン・ウク(イ・ジェウク)ら術士の活躍を描く本作で、チョン・ソミンが演じたのは盲目の下女ムドク。術士を狙う凄腕の刺客ナクス(コ・ユンジョン)は還魂術でムドクの身体に入り込む。ナクスの力に目をつけ、ムドクの体に“還魂”していることを知ったウクは、ムドクを師として迎える。素朴な下女であり、天才アサシンであり、そして実は術士を輩出する名家の跡継ぎ娘プヨンと、チョン・ソミンは3人のキャラクターを担った。ムドクとしては忠清道方言で独り言を言い、ウクとはナクスとして冷徹なトーンで話すなど完璧にこなした。一方術士と還魂者のバトルシーンや、ナクスの復讐心などストーリーラインがシリアスな中、ムドクがコミックリリーフとしても存在感を示した。
コメディエンヌとしての安定感を証明した『ラブリセット 30日後、離婚します』
スクリーンではバイプレーヤーが多かったチョン・ソミンは、『エクストーリーム・ジョブ』(15)のイ・ビョンホン監督のデビュー作『二十歳』(15)でみずみずしいコメディエンヌぶりを発揮していた。そんな才覚が『ラブリセット 30日後、離婚します』((23)で大きく開花する。
チョン・ソミン演じる映画プロデューサーのナラは、司法浪人ジョンヨルとの出逢いを運命だと思い込み、自身の結婚式の最中に脱走。2人はドラマティックに結ばれたものの、名家のお嬢様ながら豪快なナラと、地方出身で神経質なジョンヨルは喧嘩ばかり。ついに離婚を切り出すが、調停の帰り道で交通事故に遭い、揃って記憶喪失になってしまう。
恋愛映画がヒットしづらい韓国で観客動員数200万人超えという、驚異のスマッシュヒット作だ。フィクションならではのありえない展開を俳優たちの力業でドライブさせていく。特に『二十歳』以来二度目となるカン・ハヌルとチョン・ソミンによる丁々発止の掛け合いが退屈させないし、バラエティタレントも顔負けな表情の崩し方や、マシンガンのようなセリフ回しも小気味よかった。ただ体当たりで演じているというのでも、早口というのでもない。キム・ゴウンらを生んだ演技の名門校で培った基礎があるからこその安定感だった。本作で映画俳優として、主役級に輝いたチョン・ソミン。人生の苦さと喜びを心の奥に宿したコメディエンヌとして、これからますます活躍が楽しみなところだ。
文/荒井 南