『破墓/パミョ』でカリスマシャーマンに!初来日を果たした最旬女優キム・ゴウンのキャリアを振り返る
ロマンスからミステリーまで!作品や役のジャンル問わず光る演技力
「トッケビ」の大ヒット後、名実ともに人気俳優の仲間入りを果たした彼女は、「ユミの細胞たち」での“生活密着型演技”とも呼ばれるリアルな演技で、再びその実力を証明。彼女が演じた失恋によって恋愛から遠ざかってしまった平凡な会社員ユミが、再び恋することで泣いたり笑ったりと感情を取り戻していく様子が多くの視聴者の共感を誘った。
また、「シスターズ」では権力者たちの巨大な陰謀に立ち向かう貧困三姉妹の長女を演じ、弱き立場にある者の中に秘められた強さを感じる迫真の演技で話題に。
一般的に、ドラマや映画のキャスティングするうえで、登場人物の外見の雰囲気やイメージに合った役者を起用するケースが多いことから、似たような役を演じ続ける役者も少なくない印象だ。しかし、彼女はこれまで出演してきた数々の作品からもわかるように、特定の役に縛られることなく、様々なキャラクターをその高い演技力で魅力的に表現している。筆者は、彼女のこういったどんな色にも染まる変幻自在の演技は、デビュー当時からあらゆる難しい役に挑戦して磨かれてきたものだと感じている。
『破墓/パミョ』では悪霊を鎮めるお祓いをする巫堂に変身
今ではすっかり演技派として人気を博すキム・ゴウンが出演する『破墓/パミョ』の物語は、2人の巫堂が代々謎の病気に悩まされている家族から大金と引き換えに先祖の墓の改葬を依頼されることから始まる。そこに、巨額の報酬の匂いを嗅ぎつけて来た風水師と葬儀師が合流し、彼ら4人が先祖の墓を掘り起こしたことによって恐ろしい秘密が明かされていくというストーリーだ。
キム・ゴウンは、本作で若いながらも有能な巫堂ファリムを演じ、「第60回百想芸術大賞」映画部門女性最優秀演技賞に見事輝いた。全体的に不穏な空気感が漂う映画の中で、彼女の凛とした佇まいと覇気のある演技は実に印象的だった。特に、韓国の伝統的な儀式「대살굿(テサルお祓い)」のシーンで見せた圧巻の演技は、韓国で「まるで本物の巫堂のようだ!」と絶賛されているほどの大迫力で忘れがたい。
この役柄を演じるうえで、彼女は本物の巫堂を訪ねて役作りに挑んだそうで、「所作を学んだり、ジンという楽器の演奏のレクチャーを受けたりと、巫堂の先生と多くの時間を過ごしました」とインタビューで語っている。また、「テサルお祓い」のシーンについては、「実際見ることはなかなか難しくて、どのような動きで執り行うのか、どんな理由でやるのかなど資料映像を探してたくさん見て参考にしました」とも話していて、撮影の前日には1日をかけてリハーサルも行ったのだそう。
そして、すごいのは巫堂の演技だけではない。依頼を受けた際に問題の原因をいちはやく見抜く鋭さやイ・ドヒョン演じる弟子のボンギルとの信頼関係、風水師サンドク(チェ・ミンシク)や葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)といった年上の大人たちにも臆することのない強い性格など、ファリムというキャラクターの人間性を細かい表情の動きや台詞の語気などで上手く表現しているのも見どころだ。
素朴で愛らしい役から宿命を背負った複雑な役まで、ありとあらゆるキャラクターに命を吹き込み、ドラマや映画の中で唯一無二の存在感を放ってきたキム・ゴウン。今回の『破墓/パミョ』では、巫堂という今まで演じてきた人物とは異なる専門的で奥妙な役に挑戦し、その表現の幅は止まることを知らず、年々広がっているように思える。彼女のよりブラッシュアップされた圧巻の演技に是非とも注目していただきたい。
文/AMO