「異世界からいつか迎えが来るに違いない、とだいぶ大きくなるまで信じていました」
とある場面で登場する“イマジナリー空間”では、これまで描かれてきた恐怖や家族ドラマに加え、ダークファンタジーの要素も色濃くなる。冬虫は、ドアがたくさんある空間と次女アリスの名前から「不思議の国のアリス」を連想したと説明する。
「イマジナリー空間で登場する部屋は、水色に統一された色合いやパーティのような飾りつけ、ドレスやティアラは、アリスの心の底の願いや好きなものが見えて、現実での服装や部屋との対比が興味深かったです。予告の最後に出てくる怪物も、あれが本当の姿というわけではなく、子どもたちの恐怖のイメージの集合体なのかなとも思いました」。
ちなみに、冬虫は幼少期に、アリスのような“自分にしか見えない存在が見える”といった不思議な経験をした経験があるのかと尋ねると「イマジナリーフレンドはいませんでしたが、自分は魔法が使えるはずだし、異世界からいつか迎えが来るに違いない、とだいぶ大きくなるまで信じていました。当時からけっこうなおしゃべりでしたが、その話は誰にもしていないので、ほかの子にはない自分だけの秘密にしておきたかったのだと思います」と、子ども時代の自分についても明かしてくれた。
「観終えた方がああ~…と納得できるイラストに」
本作を鑑賞後、冬虫にアリスとチョンシーをモチーフにしたイラストを描いてもらった。この2人の関係性を描くにあたり、両者の醸し出す一見かわいらしい雰囲気と不安定さを伝えたいなと思ったと説明する。「不気味になりすぎないよう、でも不穏さは伝わるようにというバランスが難しかったです。チョンシーへの信頼や依存心、寂しさに恐怖など、本編前半でのアリスの感情をイメージして表情とポーズは、何度か描き直しました。どんどん過激になっていく宝探しゲームにたくさん悩んで苦しんで、それでもチョンシーの友情を裏切りたくない…という切実な感情があったと思うので、そういった危うさが表現できたらと思いました」。
特にこだわった点については「画用紙に書かれている文字は、例の“宝探しゲーム”のお題ですが、そのままではなく、作中に登場するほかのモチーフなども絡めて配置しました。映画を観る前の方にも雰囲気を伝えつつ、観終えた方がああ~…と納得できるようなイラストに仕上がっていたらいいなと思います」と、イラストに込めた想いも語ってくれた。
可愛いテディベアのチョンシーが、底知れぬ狂気や恐ろしいほどの執念をまとう邪悪な存在だと気づいた時、アリスやジェシカたちの運命はいかに!?そのおぞましい恐怖をぜひ映画館で体感してほしい。
取材/MOVIE WALKER PRESS編集部 文/山崎伸子