前週簡単に紹介した『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(93)のリバイバルに加え、近年再評価が進む『ホーカスポーカス』(93)のリバイバルも始まったことでハロウィンムードが一気に強まってきた先週末(10月18日から20日)の北米興収ランキング。当然このシーズンはホラー映画が強し。前週の『テリファー 聖夜の悪夢』(11月29日日本公開)を退けて新たに首位に立ったのも、ホラー映画『Smile2』だ。
2022年に公開され、北米累計興収1億ドルを超えるサプライズヒットを飛ばしたサイコホラー『SMILE スマイル』の続編となる『Smile2』。引き続きパーカー・フィン監督がメガホンをとった本作では、キャスト陣は一新。『アラジン』(19)のナオミ・スコット演じるポップスターが、奇妙な自殺の連鎖に巻き込まれていく様が描かれていく。
3619館で公開され、初日から3日間の興収は2302万ドル。前作のオープニング興収は2260万ドルだったので、ほぼ横ばい。その前作は9月末の公開で、ハロウィンまで1ヶ月近くにわたって安定した興行を続けたことが興収1億ドル到達の後押しとなっていたのだが、今作は10月中旬公開。ハロウィン後の11月には興収がガクンと下がることは避けられず、今年1億ドルに達している作品のオープニング成績と照らし合わせても“前作超え”は難しそう。
どちらにせよ2800万ドルの製作費を回収することは確実であり、なにより批評家からの評価は抜群。批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は85%で、観客からのそれは82%。それぞれ80%と77%だった前作を上回る高評価を獲得することに成功。先日フィン監督は地元メディアのインタビューでさらなる続編の構想を語っており、シリーズの続行はほぼ確実とみてよさそうだ。
前週1位だった『テリファー 聖夜の悪夢』は3位となり、『野生の島のロズ』(2025年2月7日日本公開)は公開4週目も2位にねばり、ついに興収1億ドルの大台を突破。また、前週限定公開がスタートしたアンドリュー・ガーフィールドとフローレンス・ピュー共演のA24作品『We Live in Time』は拡大公開に成功し一気に5位まで浮上。そして『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(日本公開中)はというと、初週末から8割ダウンの興収だった前週から、さらに7割興収を落とし、6位まで下降している模様。
今回取り上げたいもうひとつの作品は、今年のカンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールに輝いたショーン・ベイカー監督の最新作『ANORA アノーラ』(2025年2月28日公開)。ブルックリンでストリッパーとして働く女性アノーラと、ロシアの財閥の放蕩息子のロマンスをめぐって繰り広げられる騒動を描いた物語だ。
6館での限定公開で3日間興収は55万ドル、1館あたりの興収は9万1750ドルと歴代42位にランクインするハイアベレージを記録。もちろんこれは2024年公開作でNo. 1の数字であり、ベイカー監督の出世作『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17)のオープニングアベレージと比較すると倍以上。さらに「ロッテン・トマト」での批評家からの好意的評価の割合は99%と、現時点で第97回アカデミー賞の作品賞レースの有力コンテンダーと目される作品のなかでもトップの高評価。このまま大本命として賞レースを駆け抜けることができるか注目しておきたい。
文/久保田 和馬