藤井道人プロデュースでグランプリ『東京逃避⾏』が長編映画化!東京インディペンデント映画祭特別試写会
「次世代の映画監督を育成する」をモットーに、 新たなムーブメントを呼び起こす「夢のある映画祭」として、昨年誕生した東京インディペンデント映画祭。その第二回でグランプリを受賞した、秋葉恋監督の『東京逃避⾏』が藤井道人監督プロデュースの元で長編映画化されることが決定。“カミコレ2024”内にて東京インディペンデント映画祭特別試写会が行われた。
“カミコレ2024”は、アートを通して“まち”をもっと楽しく、活気あふれる場所にしたいという強い想いから、東京神田神保町映画祭の設立10周年を記念して実施される新しいスタイルの“まちづくり”イベント。今回の特別試写会で上映されたのは、第一回東京インディペンデント映画祭スカラシップ作品に選ばれた古川葵監督の『ななこの恋わずらい』、全辰隆監督作品の『国道7号線』、⽥中聡監督作品の『朽ちる』、そして第二回のスカラシップ受賞作品である『東京逃避⾏』となる。
第⼀部では、映画祭審査委員⻑の藤井をはじめ、古川監督、全辰監督、⽥中監督が登壇。藤井が各監督へ作品の想いを聞くと、全⾠監督は「この映画は日本で初めて撮った映画。映画を撮る機会をもらえたのがうれしかったですし、果敢に日本ロケ、韓国ロケをやって、技術スタッフを韓国から日本に連れて来てと初挑戦のことばかりでした。最初は⼼配でしたが、無事に撮り切れてよかったですし、自分が表現したい在日の話を描けたのがよかったです」と振り返る。すると藤井は、「なんの修正もなく、フィードバックの数も少なかったのが全⾠隆監督の作品。これをやるんだというパッションが企画書から感じられて、とても魅⼒的でした」と作品の魅⼒を語った。
⽥中監督に対しても藤井は、「初めて観させてもらったのが『⽣まれる』で、帰り道まで引きずられた記憶があります。柄本さんをキャスティングした⼿腕なども素晴らしいなと思いました」とし、これを聞いた田中監督は「最初は、⽥中さんコメディを作ってくださいということだったのですが、その時旭川いじめ事件のことが気になっていて、こういうのを作りたかったという経緯があります。柄本さんは脚本に興味を⽰してくれました。完成後に柄本さんになんでインディペンデント映画に出てくれたのかを問うと、『インディペンデントであるかどうかは関係ない、『朽ちる』にはどうしてもやりたいシーンがあった、⾔えませんが』とおっしゃってくれたんです」と撮影秘話を明かしている。
続く古川監督は、「これをやろうと思ったのは前に撮った『my home town』という東京に出て⾏く⼥の⼦の話だったので、その続きとして、故郷に帰ってきたらどうなるのかという⼥の⼦の話にしました」と説明した。
最後に、「長編映画を撮るなら?」という質問が投げかけられると、全⾠監督が「⽇韓合作をやりたいという想いがあるので、在⽇韓国⼈の映画や、⽇韓関係の友好関係が良くなる話や、歴史的な蟠りが解決できるような話が作れたら良いなと思います」、⽥中監督は「⻑編でもコメディを発注されてとんでもない裏切りをしたいと思います」、古川監督も「ローカルな人を描くのが好きなのでずっとそれを続けていきたいです」と、それぞれが意思表明をするなかで第⼀部は幕を閉じられた。
続いて、第二部では秋葉監督の『東京逃避⾏』が上映。上映後、藤井に秋葉監督、出演した橋⼝果林、浅川眞来が登壇した。
東京インディペンデント映画祭では、次世代監督への育成スカラシップとしてグランプリ受賞作品にABEMAから⽀給総額1500万円の製作⽀援と藤井プロデュースの⻑編映画を製作する権利が与えられている。第二回でグランプリを受賞した『東京逃避⾏』は、現代のトー横問題を前代未聞の1⽇リアルタイムという形式を取り、新宿にやって来た2人の少女の逃避⾏で描く学⽣が主体となって制作した意欲作だ。秋葉からは「14分という短い作品ですけど、いますぐみんなに届けたいという想いで作った⼤事な14分間です。観ていただいてとてもうれしいです」という挨拶があり、観客からは拍⼿が沸き上がった。
出演者の浅川も「このテーマ⾃体が大きなテーマで、秋葉監督の⼤胆に果敢に向き合う姿勢が好きで⼀緒に作品を作ることができてうれしかったです、ありがとうございます」、同じく橋⼝は「この作品で、なにも知らない⼥の⼦をトー横の中まで引き込む、さらにそれを⾃分の⼿で元の世界に返す17歳の⼥の⼦という⼤事な役割を演じさせていただいたことが光栄です」と挨拶。続けて、藤井も「東京インディペンデント映画祭について、第⼀回の審査は困らなかったのですが、第二回は⾮常に悩みました。ただ、僕たちがなぜこの映画祭に協⼒して、⽀援をしようと思ったかというと、技術じゃないなにかがあるはずだということと、本当に映画監督に明日からなれますという素晴らしい作品がたくさんあったなかで、秋葉監督のこの作品には、地雷や熱みたいなものがあって、こういうものはプロになると無くなっていくのですが、なくならないように育てたいという想いで、この作品にスカラシップを与えました」と選考理由を明かしている。
さらに、「そして、今回は!制作発表ということで、⻑編のタイトルは」と藤井が問うと、秋葉は「『東京逃避⾏』の⻑編版を制作いたします!」と⻑編映画化を発表。藤井は「僕もプロデュースという⽴場でキャスティングと執筆と、いろいろなサポートをさせていただいているのですが、結局はお前なんだぞ、と。結局は⼤⼈がなにをしても別にそれは⼀時的なもので、⾃分の⼈⽣は⾃分で、秋葉くんが切り開いてくれるものだと思います。20年前は⾃分⾃⾝も⾃主映画ボーイで、本当にあの時間が僕にとって原点。すごく⼤事な時間だったと思います。その時に⼀緒にやっていた仲間といま一緒に会社をやっています。20年続くチームを作ってもらえたら、こういう会を開いた意味もあるんじゃないかなと思います」と秋葉へのエールを送る。
最後に、秋葉監督が「スカラシップという機会をいただいて、⻑編映画デビューをする。もう学⽣でもない、映画監督志望ではない、映画監督になるんだというこの気持ち一心でいま駆け抜けていて、あいつすごかったよなとみなさんの記憶と⼼に残る、素晴らしい作品を作るという気持ちです。若いから、経験がないから、そんなことを⾔い訳にしないで、絶対負けないという気持ちで、しっかりと前を向いて素晴らしい作品を届けられるようにがんばります!最⾼の作品を作るので、みなさま完成まで応援よろしくお願いいたします!」と意義込みを語り、大きな拍⼿に包まれ、イベントは幕を閉じた。
東京インディペンデント映画祭がきっかけとなり、切り開かれた秋葉恋監督の長編映画デビューへの道。その熱い想いがこめられた『東京逃避⾏』の完成を楽しみに待ちたい。
文/平尾嘉浩