「僕は自然の流れに任せる形でもいいんじゃないか、というタイプなんです」
――ちなみに、本作の最終ディスカッションに西垣さん自身が参加するとしたら、どんな立ち回り方をしますか?
「いやあ、難しいな。僕はたぶん、優等生タイプでまっすぐな、波多野みたいな可もなく不可もない動き方をするんじゃないかな(笑)。リーダーシップがあるわけでもないし、学生時代も副委員長や書紀といったサポート役に回ることが多かったですからね」
――告発される前の袴田を演じたことで、自分から場を盛り上げたほうがうまく行くこともあるんだな、といった気づきも得たんじゃないでしょうか?
「袴田のキャラは憧れではあるけれど、僕には絶対にできないです。“別に飲み会が盛り上がらなくてもいいじゃん!みんなが楽しくなきゃダメ?”と思ってしまうから。袴田を演じてみてコミュ力は大事だなと思うし、他人のことをちゃんと見て、空気が悪いなと思った時に声をかけたり、困っている人がいた時に手を差し伸べたりする彼の立ち回り方は本当に素敵です。でも、僕自身は積極的に“なんとかしよう”とは言わない。自然の流れに任せる形でもいいんじゃないか、というタイプなんですよ」
――西垣さんは3年前まで実際に大学生で、今回の6人の中では一番演じられた就活生に近い立場ですから、彼らの気持ちも理解しやすかったのでは?
「そうですね。もちろん彼らの気持ちはわかります。ただ、就職活動には触れたことがなかったので、そこは自分の大学の同期に体験談などを聞いて。あと、袴田が高校時代、野球部でキャプテンをやっていたというキャラクターだったので、野球部の友だちに『ゴリゴリの体育会系ってどんな感じなの?』と聞いたりはしました」
――それはなにか今回の役のプラスになりました?
「たぶん、なっているとは思うんですが、具体的にどこが、と聞かれると難しいです。知ったことを“このシーンで活かしてみよう”と思って演じるのは、勉強したことを発表しているみたいな感じになるけれど、そうではなくて。頭の片隅にあるだけでも演技に変化が出るだろうし、そうやって時間をかけたことが自信にもなるので、リサーチをするのとしないのとでは1、2ミリぐらいの差があると僕は思っているんです」
――就活はしたことがなくても、これまでの人生の中には絶対にこれを勝ち取りたいと思う瞬間は何度かあったと思います。そうした時に、願掛けや、自分の中で決めているルーティンはありますか?
「僕はそういうことをしないようにしています。“よし、頑張ろう”って思うのは力むのと一緒だと思っているので、常にフラットで、なにも変えない。“いつもと一緒”がベストです」
――なるほど。では、告発によって裏の顔が暴かれる本作にちなんだ質問です。6名の中から、どなたかのあまり知られていない魅力や意外な素顔を告発してください。
「ヒロインの嶌衣織を演じた(浜辺)美波さんが、ある時『うちにお米が届きすぎて消費できない』と言っていたので、『じゃあ、ちょうだい』って頼んだんです。そうしたら、後日実際に送ってくれたんですけど、その差出人が“嶌衣織”だったんですよ(笑)。宅急便の人から『嶌さんからの荷物です』って言われた時は、最初『嶌って誰?』ってなりました。彼女はよくそういうことをしますね」
――それは粋な計らいですね(笑)。ちなみに、西垣さんがもし就職活動をすることになったら、どのように自己PRをしますか?
「僕は『学生時代、フェンシングをやっていました』という一本槍で行くと思います。それしかやってこなかったので。あとはエンタメが好きだから、エンタメ業界の面接などで『映画が好きです。こういう作品をたくさん観ていました!』みたいなことをきっと言うと思います」
――エントリーシートの長所や特技を書く欄にはなんと書きますか?
「長所は、客観的に物事を見られるところ、ですね。常に1歩引いているような自分を持っている感じもするんですが、そこは仕事をする時にすごく活きているような気がしています」
取材・文/イソガイマサト