アルコ&ピースが上田慎一郎監督作『アングリースクワッド』に最大級の賛辞!「平子をダマすって、相当なもんですよ?」
「家を買った時も、わからないふりして全部ハンコ押しました」(酒井)
──その可能性はありますよね。で、ちょっと本線からは脱線するんですが、お2人は窮地に陥るもその場の機転で乗り切った経験というのはありますか?
平子「どうだろう?乗り切れなかったことはいっぱいありますけどね。コントでも漫才でもネタが滑っているから途中で変顔を入れたけど、やっぱりダメだったっていう。でも、それで言うと、芸人は窮地から脱さなくていい職業でもあるんです。若手とか駆け出しの時は、窮地からもがいて這い上がろうとして空気が淀んじゃうことが多々あったんですけど、芸歴を重ねて、いまはきれいに落ちることができるようにはなりましたね。なので、脱するっていうより“落ちることで脱する”という境地にいたったと言いますか。若い時は痛くないふりをして、ゆっくり立ち上がって変な空気にしちゃっていたんですけど、ある時期から『イテテテテテ!』って、ちゃんと声に出せるようになったんです。それもようやく最近、ですかね…。そっちのほうが小銭が入るぞっていうことに気がついたのもありますけど(笑)」
──“落ちることで脱する”、ナルホド。酒井さんはいかがでしょう?
酒井「なんでしょうね…でも、僕はそれこそ窮地じゃないふりをしちゃうかな。家を買って、“こんなローン組むんだ…”って思った時も、わからないふりして全部ハンコ押しましたから。絶対、いまの世の中的に自分は間違いなく窮地であるんですけど、もう知らねえやって目をつぶってハンコを押しました」
平子「同じ時期に家を買ったんですけど、僕も不動産会社の人に言われました。『手、震えないんですね』って。金額を見たら震えちゃうと思うから、もう『甲』と『乙』の字しか見ないようにして。甲と乙のどっちがこっち側なのかもわかっていないんですけどね」
酒井「唯一、割り印を押す時はドキドキしましたけどね」
──橘に地面師詐欺を仕掛ける『アングリースクワッド』の本編でも印鑑絡みのシーンがあるので、そこにつながりましたね!
平子「そういえば、確かにそうだ(笑)」
「おもしろい作品が作れて人当たりも柔らかくて…非の打ちどころがないなんてズルい」(平子)
──というところで話を本線に戻しまして、お2人は上田監督とも対談されたそうですが、作品のみならず人間性にも惹かれたと聞きました。
平子「そうなんですよ、こんなにおもしろい作品が作れて人当たりも柔らかくて…ズルいですよね、非の打ちどころがないなんて。だから、どこか欠陥があってほしいというか。例えば、ささくれが剥けやすいとか(笑)。でも、酒井も言っていましたけど、作品に人間性がにじみ出ているんです。それは確かに見ていて感じ取れますよね」
酒井「そういう人柄だから、役者さんもちょっとわがままを言いやすかったりするんじゃないかなあ」
平子「相対する俳優さんの持ち味を取り入れて、よりよいものにして画面上に出せるような人間性と技術を持ち合わせているというか。取りまとめ力?吸収力も人間力も高い方ですよね。『カメラを止めるな!』でも結果を出して、今回もこれだけの映画を作れるんだから、もっと生意気でもいいのになって僕なんかは思っちゃったりもするんですけど(笑)、きっと楽しいことが好きなんでしょうね、純粋に。お話して感じたのは、すごく少年っぽさが残っているなっていうことです。実は脱税とかしていてほしいんですけどね(笑)。上田監督が脱税で捕まったら、本当の意味で『アングリースクワッド』が完成するんじゃないかな?」
酒井「自ら身体を張って作品と現実をリンクさせるっていう(笑)」
平子「そこまでやったらスゴいよな。めちゃくちゃ笑い転げるよ」
──上田監督にはまだまだ日本映画を盛り上げてほしいので…「次はこんな映画を撮ってほしい!」と勝手にリクエストをするなら、お2人はどんな映画を望みますか?
平子「どストレートな恋愛ものを観てみたいですよね。照れを一切なくしたラブ・ストーリーで、徐々に惹かれ合っていくとかじゃなくて、映画が始まって3分で恋愛が成就するんです。そこからの長尺でどう恋を描くのかを見てみたくて。付き合ってからの感情の揺れ動きだったり機微を上田監督が描いたら、どうなるのかなって。たぶん、そのほうが難しいと思うんですよ。伏線とか張りようがないので。でも、伏線ゼロで上田監督がなにを回収するのかが見てみたいし、ものすごくおもしろい映画を見せてくれるんじゃないかなって」
酒井「確かに、伏線ナシっていう縛りはあった方が逆におもしろくなりそうですよね。『絶対ダメ、伏線ナシ!』がルール」
平子「伏線張ったら電流が流れます」
──ディレクターズチェアに“ビリビリ”が仕込んであるんですね(笑)。
平子「次の3つのお題を破ったら、ビリビリが発動します。①成就している恋愛、②登場人物は誰も死なない、③悪人ゼロ!ただただうまくいっているだけの恋愛をどう見せるかがポイント」
酒井「めっちゃ難しそうだな(笑)」
平子「本来なら死ぬほどつまんない映画になりかねないところを、上田監督ならエンタテインメントに昇華させてくれるんだろうと期待して。しかも上映時間は180分で!なんならワンカットで」
酒井「ムダに超大作すぎるだろ。でも、確かに観てみたいなあ(笑)」
取材・文/平田真人