津田健次郎が明かす、百獣の王=クレイヴンの演じ方と自身の“ダークさ”「日常では表に出ないけど、お芝居では出すことができる」

インタビュー

津田健次郎が明かす、百獣の王=クレイヴンの演じ方と自身の“ダークさ”「日常では表に出ないけど、お芝居では出すことができる」

原作のマーベルコミックでは、“スパイダーマンの宿敵”とされ、その強さはヴェノムにも匹敵するとされる最強のハンター“クレイヴン”の誕生を描く『クレイヴン・ザ・ハンター』(12月13日日米同時公開)。「キック・アス」シリーズなどでヒーロー役を演じ、「007」シリーズの次期ジェームズ・ボンド役として有力な候補と報じられているアーロン・テイラー=ジョンソンが、“最強”に鍛え上げられた美しい肉体で、マーベル史上最もバイオレンスなヴィランと称される“クレイヴン”を熱演している。

過激な狩りの描写でR15+指定を受けた『クレイヴン・ザ・ハンター』
過激な狩りの描写でR15+指定を受けた『クレイヴン・ザ・ハンター』MARVEL and all related character names: [c] &TM 2024 MARVEL

日本語吹替版で“クレイヴン”ことセルゲイ・クラヴィノフの声を担当したのは、声優や俳優としてマルチに活躍する津田健次郎。強靭な肉体に野獣のようなパワーとスピードを宿し、研ぎ澄まされた五感で狙った獲物を“血の果て”まで追跡する“百獣の王=クレイヴン”の声は、津田の肉体からどうやって生み出されたのか。その秘訣に迫った。

冷酷な父親(ラッセル・クロウ)と狩猟に出た際に巨大なライオンに襲われたことから“百獣の王”の力を宿し、容赦なきハンターと化したクレイヴン(アーロン・テイラー=ジョンソン)。金儲けのために罪なき動物を狩る人間たちをターゲットに“狩り”を実行していく彼は、やがて大きな組織へと近付いていく。そこに立ちはだかるのは、全身が硬い皮膚に覆われた巨大な怪物ライノ(アレッサンドロ・ニヴォラ)。そしてやがて“裏の世界の殺戮者”と呼ばれる自らの父親と対峙することとなる。

「身体の内側の筋肉を使うようなイメージで、俳優さんの声に寄り添う」

クレイヴンを演じるにあたっての秘訣を語ってくれた
クレイヴンを演じるにあたっての秘訣を語ってくれた撮影/河内彩

クレイヴンを演じるにあたって、最強のヴィラン感を出すべく馴染みの“ドス”をきかせてテストに臨んだものの、音響監督から「もう少し若い感じでいきましょうか」と声が掛かったという。「僕個人の印象としては、『クレイヴンは悪いヤツよりさらに圧倒的にパワーがある、悪に近い感性を持ったヤツ』というイメージだったので、映画の冒頭、刑務所の中でロシア語を交えて話すシーンでは、よりドスを強めにきかせる感じで最初はやってみたんです。でも『あ、そっちじゃないんだ』と思って現場でまた修正していった感じでした。彼は年齢的にも若いので、『もう少しアクを抜いていきましょうか』という方向性になりました」。

たしかに、発する声は「冒頭からいきなりフルスロットル」というわけでもないのだが、アクションシーンの息遣いや唸り声のワイルドさたるや、まさしくどう猛な“百獣の王”そのもの。取材を受ける穏やかな津田からは想像がつかないが、声優のみならずアクターでもある津田のこと。クレイヴンを演じるアーロン・テイラー=ジョンソンばりに全身を使って声を出しているのでは…?と訊くと、「さすがに同じ体勢をとろうとすると、マイクの位置から外れてしまうので…(苦笑)」と断りながら、その秘訣を言語化してくれた。

「基本的にはやっぱり原音を重視しつつ、俳優さんがどんな風に声を出しているのかというところに寄り添っていく感じではありましたね。演じている俳優さんの表情や肉体状態を確認しつつ、どの辺りに力が入っているのかを意識しながら身体の内側の筋肉を使うようなイメージで。ただこの作品はアクションシーンの展開がめちゃくちゃ速いので、スピードに追いつきながらやっている感じではありましたけどね」。

ライオンに襲われたことで“百獣の王”の力を持つ、獰猛で最強のハンターへと覚醒したクレイヴン
ライオンに襲われたことで“百獣の王”の力を持つ、獰猛で最強のハンターへと覚醒したクレイヴンMARVEL and all related character names: [c] &TM 2024 MARVEL

そう津田が明かすように、クレイヴンは裸足でロンドンを走ったり、壁を駆け抜けたり…と、見た目は普通の人間でありながらも、目にも留まらぬ速さの超人的な動きが特徴だ。津田が演じるマーベルのヴィランといえば、『ブラックパンサー』(18)で主人公の前に立ちはだかる宿敵、キルモンガー役の好演も記憶に新しいが、津田は「同じヴィランはヴィランでも、この2人のキャラクターは全然違う気がしますね」と分析する。


「たしかに、キルモンガーもフィジカル的には相当強い男ではありましたけど、王族出身だけあって、“野良”のクレイヴンより毛並みがいい。かたやクレイヴンの親父はマフィアの親分ですからね(笑)。それこそ彼は、子どものころからライオンの子どもが崖から突き落とされるような育てられ方をしていて、『死んだら死んだでしょうがねぇ』みたいな感じなので(笑)。キルモンガーよりもクレイヴンのほうが、さらにワイルドなんじゃないでしょうか」。

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