津田健次郎が明かす、百獣の王=クレイヴンの演じ方と自身の“ダークさ”「日常では表に出ないけど、お芝居では出すことができる」
「残虐なアクションでR指定ですけれども、この映画はドラマパートも実はかなり大人向け」
まさに、『クレイヴン・ザ・ハンター』がマーベル作品のなかでも異彩を放っているのは、本作がヴィラン誕生の過程を描いたアクション超大作でありながら、ロシアンマフィアの権力闘争を巡るギャング映画でもあり、マフィアの重厚なファミリー映画の側面を持っている点にある。父親のような無慈悲な人間にはなりたくないと切望しながらも、自らの正義を貫くために、血にまみれた報復と、自警の道へと歩み出していくクレイヴン。津田いわく「アクションシーンの残虐性がR指定の要因だとは思うんですけれども、この映画はドラマパートも実はかなり大人向けなんですよね。ラッセル・クロウ演じる父親との確執や、フレッド・ヘッキンジャー扮する弟との関係はどちらも非常に劇的で、感動とはまた違う大人の苦みが走るんです。演じている僕らとしては、会話劇のほうがやりがいはありますね」。
ちなみに、クレイヴンことセルゲイの異母弟のディミトリは、スパイダーマンと戦った最初のスーパーヴィランである“カメレオン”。弟と一緒にいる時だけは、素の自分を隠さずに見せるクレイヴンを演じながら、津田はこんなことを感じていたという。
「アーロン・テイラー=ジョンソンさんの吹替は『ブレット・トレイン』と『フォールガイ』でもやらせていただいているんですが、同じ俳優さんでも作品が違えば当然演じ方や印象が変わるので、今回はまったく違う感じでやろうと思っていたんです。アーロンさんは、ムキムキでワイルドな雰囲気をまとった人なんですが、僕のなかでは綺麗な印象もあって。本作のなかにもキュートな部分がちょっと出てきていたりする。基本は『うわ、すげえな』っていう暴力シーンが続くんですが、弟とキャッキャしながら戯れているところなんかは、非常に微笑ましいといいますか(笑)。セルゲイも弟と接する時だけは普通の明るい兄ちゃんなんだというのがすごく意外で、いいシーンだなと思って観ていました」。
「いわゆるやってはいけないことが多い正義のヒーローと比べると、ヴィランの方がより自由度が高くて、気を遣わないでいいからラク」と、低音ボイスを活かして悪役を演じることの多い津田ならではの視点を明かしつつ、ヴィランの特徴としては「音楽に詳しいわけじゃないんですけど、メジャーではなく、マイナーな音が出ている感じがします」と語る津田。
「でも、セルゲイはやっていること自体は結構派手ですよね。密猟者をやっつける時なんかもボーガンで壁にドンって張り付けにしちゃったりして(笑)。キュートなだけじゃなくユーモラスな感じもあって。“マイナー”と言いつつも、このヴィランは意外と明るいんだよな」。
さらに、津田は「ふざけるのは僕も大好きです(笑)」と言いながら、普段はこれほど穏やかなのに、腹の底から邪悪な声をいつでも出せる理由について、「僕もダークなものはいっぱい抱えているので…」とニヤリ。「あまりいいものではないので日常で表に出そうとはまったく思わないですけど、お芝居では当然ながらそういったものも出せますからね」。