『映画「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」』天海祐希&上白石萌音が見つめ直したダークな感情との向き合い方「もう悩まない。でも、若いうちはいっぱい悩んだほうがいい」
「“悩まないようにしている”というよりは、そもそも“悩むことがない”」(天海)
――過去のインタビューによれば、上白石さんの中には意外とダークな感情も“ある”と…。
上白石「あります、あります(笑)!」
天海「そりゃあ、誰にだって多少はありますよ」
――上白石さんはあらゆる感情を掘り下げて、お芝居に昇華させることが多いそうですね。
上白石「そうです。だから今回は、やっとダークな部分を使える時が来たな…!と(笑)」
天海「なるほどね~(笑)」
――天海さんは積極的に悩まないようにされているイメージがあるのですが。
天海「“悩まないようにしている”というよりは、そもそも“悩むことがない”かな。もちろん、お芝居や仕事に関しては悩んだり考えたりすることはあるけど、それ以外のことについては、私はあんまり悩まない」
上白石「それって、昔からですか?」
天海「いや、若いころは選択肢がいっぱいあるから、『どっちのほうがいいかな?』『あれもできそうだな』『これもやりたい』って悩むこともあった。でも、だんだん年齢が上がるにしたがって、『自分にはもう必要ないもの』『できそうにもないこと』『もうやらないこと』がどんどん手のひらからこぼれ落ちていくから、あとは残ったもののなかから選べばいいだけ」
上白石「あぁ、なるほど…」
天海「だから、もう悩まないなぁ。でも、若いうちはいっぱい悩んだほうがいいよ。可能性がいっぱいあるんだから」
上白石「いまはこのままでもいいんだ…。悩んだ先にいつか私にもそんな境地が開けるかと思うと楽しみです」
天海「いいよ~。気がラクになるよ~」
――そうは言っても、ふとした瞬間、魔が差すというか。この映画のなかに出てくるような、誰かを羨んだり妬むような “負の感情”に押しつぶされそうになることはないですか?
天海「それこそ昔は、『いいな~』とか、『なんで私はあの役をやらせてもらえなかったんだろう…?』みたいに、誰かを羨んだことが私にもあった。でも、いまはもう『わぁ~すごいな~』『すてきだな』って思いながら見てる」
「天海さんは困ったり悩んだりしている人にスッと手を差し伸べてくださる方」(上白石)
――それは、ちゃんと実績を重ねてきたからこその、“揺るぎない自信”があるから?それとも、自分以外の人と比べても仕方がないと思えるからでしょうか。
天海「そう。人と比べても、自分とは持ち味が違うんだから。もちろん、『持ち味が違うから』というひと言で済ませてしまうのも、あまりよくないなとは思うんだけど。冷静になって、『自分だったらできたかな…?』『いや…。きっと私には難しかっただろうな』って考えてみると、純粋に『すごいな~』っていう気持ちが湧いてくる」
上白石「それこそ天海さんって、紅子さんじゃないですけど、現場で困ったり悩んだりしている人に、スッと手を差し伸べてくださる方なんです。ある時、現場で天海さんとお話をしていたら、急に天海さんが後ろを振り返って『危ない!』と声を上げたことがあって。見たら、まさに後ろのスタッフさんが転びそうになっていて。私、『天海さんって後頭部にも目がおありなんだ』と思って、本当にビックリしたんですよ!」
――驚異的な視野の広さをお持ちだと。やはり、主演として立つからには、「必要な人に、必要な時だけ手を差し伸べてあげたい」といった想いが、天海さんのなかにもありますか?
天海「そうですねぇ。これは別に中田監督がということではなくて。世の中には自分が思っていることを伝えるのが上手な監督もいらっしゃれば、あまり得意じゃない監督もいらっしゃって。監督が言っていること自体はものすごくよくわかるんだけど、それを演じる人間として受け止めた時に、『こういうことができなくて、こういうことが起こってしまうんです』ってことを、上手く伝えられない役者さんもいたりする。そういう時は、『監督が言ってるのはこういうことで、あなたが悩んでることはこういうことだよね?』って、私が交通整理を担当することはありますね。お互いの事情や理由をちゃんと伝え合った上で、それぞれが正解を見つけていかれたらいいと私は思うし。物作りをする上で、とても大事なことだと思うから」