兄は『ホーム・アローン』の天才子役。『リアル・ペイン~心の旅~』で賞レースの有望株に躍り出たキーラン・カルキンとは?
『17歳の処方箋』&「メディア王~華麗なる一族~」で難役を「ただなんとなく」演じ切る!?
そんな特殊な家庭環境の下、キーランは『ホーム・アローン』と『ホーム・アローン2』(92)で主人公の従兄弟を演じて兄と同じ道を歩み始める。潮目が変わったのは『17歳の処方箋』(02)。同作で裕福な家庭で育ちながら偽善的な周囲の人々に反発する青年の葛藤を演じたキーランは、第60回ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞候補となり、俄然、その演技力にスポットが当たることに。
映画批評家のロジャー・エバートは、「カルキンは不満のなかで育てられた、恵まれた少年の心理を見事に演じている」と称賛を惜しまなかった。キーランの演技力は兄譲りなのか、それ以上なのか、もしくはまったく異なる資質なのか、判断に窮するところだが、本人は「技術的な訓練はいっさい受けていないし、ただ、なんとなくやってきて、それを続けてきたら、ああキャリアができた。そんな感じ」と自分を分析している。
劇中でローマン自身が認めているように、「メディア王~」でキーランが演じる一族のキーパーソンは境界性人格障害にカテゴライズされるらしい。そんな難役を「ただなんとなくやっている」のだとしたら、俳優として末恐ろしくはないだろうか。お気づきのように、すでに彼の頭の上からは“マコーレーの弟”という形容は完全に消滅し、カルキン一家を代表する存在になったわけだ。
ゴールデン・グローブ賞はもちろん、アカデミー賞でも注目される存在に
『リアル・ペイン~』でキーランが演じるベンジーは、ジェシー・アイゼンバーグ扮する主人公、デヴィッドとは長らく疎遠だった従兄弟で、神経質なデヴィッドとは真逆の気楽で社交的な性格の持ち主。デヴィッドにとって、不適切発言も我慢しないベンジーとの根比べのような旅が、実は映画の主題だとわかる後半で、キーランの自由奔放な演技が映画には必要不可欠だとわかる。ゴールデン・グローブ賞はもちろん、続くアカデミー賞もかなり有力なのではないだろうか。
文/清藤秀人