2025年1月、“KAIJU”との最終決戦がはじまる…『パシフィック・リム』イヤーに感じたい、ほとばしる圧倒的な“愛”

コラム

2025年1月、“KAIJU”との最終決戦がはじまる…『パシフィック・リム』イヤーに感じたい、ほとばしる圧倒的な“愛”

エンドロールに綴られた2人のモンスターマスター

次は香港襲撃直後に裂け目近くに現れた3体の怪獣の迎撃と、共に実行された裂け目破壊作戦について。残された2機のイェーガー、核爆弾を搭載したストライカーとジプシーは共に太平洋の海底へと向かう。ジプシーがカテゴリー4の怪獣ライジュウとスカナーに圧倒されるなか、初のカテゴリー5の怪獣スラターンの攻撃によって行動不能になったストライカーは自らを犠牲にして自爆し、怪獣たちを撃退。核爆弾を怪獣攻撃に使用したため、ローリーとマコはジプシーの原子炉をメルトダウンさせることで、裂け目の破壊を試みる。

最終決戦に向かうジプシーとストライカー
最終決戦に向かうジプシーとストライカー[c]EVERETT/AFLO

イェーガー2機に対して怪獣3体で迎え撃つ黒幕。裂け目の奥にある異次元世界からクローン怪獣を尖兵として送り込み、侵略を進めようとする様は、「ウルトラマンA」に登場する侵略者、異次元人ヤプールからの影響をもろに感じさせる。さらに、彼らが送り込む怪獣たちはすべてDNAを同じくしたクローンであるのと同時に、制作としては3DCGのモデリングをいくつか流用して数種類の怪獣を作成していたという。これはまさに物語と制作両方の観点から、着ぐるみや造形物のカラーリングなどを変更して別のものとして登場させる流用に似たような機転を感じさせる。これは「ウルトラマン」シリーズ、「ゴジラ」シリーズでもよく見受けられ、特撮ファンはニヤリとさせられるのである。

本作の冒頭で怪獣が襲うのは、やはり“漁船”
本作の冒頭で怪獣が襲うのは、やはり“漁船”[c]EVERETT/AFLO

デル・トロ監督の特撮愛はエンドロールにまで綴られている。「この映画をモンスターマスター、レイ・ハリーハウゼン本多猪四郎に捧ぐ」。レイ・ハリーハウゼンはストップモーション・アニメーターとして『シンバッド 七回目の航海』(58)など金字塔的作品に携わり20世紀に特撮技術を作り上げた第一人者。そして本多猪四郎は言わずもがな、初代『ゴジラ』(54)の生みの親であり、まさに「怪獣映画」の始祖と言っても過言ではない人物。ギレルモ・デル・トロ監督は特撮オタクとしてこの2人への敬意を表することを忘れなかったのだ。


人生が変わった『パシフィック・リム』での映画体験

本作公開当時、同級生3人となんとなしに映画館にやってきた私は、この映画、そしてギレルモ・デル・トロという映画監督と出会い、人生が大きく変わった。この映画からほとばしる圧倒的な“愛”が、大好きだった特撮という文化を通して身体に流れ込み、受験勉強や将来の不安に覆われ見失いかけていた“熱”を蘇らせてくれた――そんな映画体験だったことを覚えている。『パシフィック・リム』は私と映像の世界を結びつけた原点であり、いまでも大きな道標だ。

文/小泉雄也

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