“人が消える山”が異様な雰囲気…『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』本編映像
日本で唯一のホラージャンルに絞った一般公募フィルムコンペティション「第2回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞した、近藤亮太監督の短編映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』が、長編映画となり2025年1月24日(金)に公開される。このたび本作初の本編映像が解禁された。
弟の失踪にまつわる1本のビデオテープに閉じ込められた、粗く不穏な映像に心底ぞっとするような、真の恐怖を体感できる“正統派Jホラー”となる本作。「呪怨」シリーズなどで知られるJホラーの巨匠、清水崇総合プロデュースの下、近藤監督は本作で商業映画デビューを果たす。近藤監督は、「リング」シリーズの脚本家である高橋洋に師事し、高橋の監督作やNetflixドラマ「呪怨:呪いの家」でも助監督を務め、今年話題となったテレビ東京のドラマTXQ FICTION第1弾「イシナガキクエを探しています」、放送中の「飯沼一家に謝罪します」で演出を務めるなど、ホラー界に彗星のごとく現れた俊才として、いま熱い注目を集めている。
主演は、近年話題の数々の映画やドラマに出演し、今年公開の映画『プロミスト・ランド』(24)に主演するなど若手注目株の杉田雷麟で、平井亜門、森田想、藤井隆らも出演。Jホラーのすべてを体に染み込ませて来た正統派継承者が、新たなステージに押し上げたJホラーに期待してほしい。
今回解禁されたのは、主人公の敬太(杉田)と同居人の司(平井)の2人が、“人が消える山”に向かうシーンの本編映像だ。忌まわしい過去をたどるべく、敬太の実家にやってきた2人だったが、「いまからあの山に行こうと思う」という敬太の決断に、間もなく日が落ちようとするなか、弟が失踪した山へ、失踪後初めて向かうことに。
いざ山道の入口にやってくると司は「ここ、いまから登るの?」と警戒する様子を見せるが、敬太のことが心配なこともあり2人で山に足を踏み入れる。山道に入ってすぐに、立て看板を見つけるが、そこには“熊出没注意”とともに、“兒玉日向君を探しています”という貼り紙がされていた。
その看板をじっと見つめていると、通りすがりのお爺さんから、「いまから登るのかい?」と話しかけられる。お爺さんも看板へと目を向けると「兒玉日向君ねぇ」とつぶやき、すかさず「知ってるんですか?」と敬太が質問すると、「そりゃ、もちろん」と答え、一生懸命探したけど見つからなかったと振り返る。続けてお爺さんから「この子がいなくなった後、山で一度、姿を見つけたことがあるんだよ」と明かされ、驚く敬太だったが、「あとを追ったんだけどね、すぐにどっか行っちまった。あの子はずっとかくれんぼしているんじゃないのかな。そう思った方が幸せだよ。そう思うんだけど、あんたどう思う?」と投げかけられたところで映像は終わる。この意味深な問いかけは敬太だけでなく、観ているこちら側にも“かくれんぼ”とはどういう意味なのかと、脳内にこびり付き、恐怖とは異なる拭いきれない気味の悪さを残す。
山に近づくにつれ不穏に響く音楽により、なにか得体のしれないものに近づいているような緊張感が増していく。劇中の音楽は、近藤監督の希望によりアーティストとしての活躍も目覚ましい、作曲家のTejeが担当。近藤監督は「安里麻里監督の『アンダー・ユア・ベッド』(19)の音楽がとても好きで、いつかお願いしたいと思っていた」とオファーを振り返る。本作ではテーマ的なメロディ音楽ではなく、場面に沿ったミニマルな音を採用。ジャンプスケアを煽るような効果音などの“ホラー映画らしさ”は皆無なため、一見控えめなように思えるが、実は物語に没入させ、心をざわつかせる不穏な音楽がむしろ随所で効果を発揮している。
登場人物たちも感情の起伏を抑えており、大きい発声はほとんどない。むしろ、静かに話すことにより、彼らの感じている恐怖を掻き立てられる。また、本編のある箇所に意味不明な声がかすかに聞こえるシーンがあるが、それは監督が音仕上げの現場で、アドリブで吹き込んだもの。幼いころから恐怖をテーマにしたコンテンツに首まで浸かって身に染み込ませてきた近藤監督が放つ、Jホラーの新たな魅力が体感できそうだ。目に見えぬ“なにか”がまとわりつく恐怖から逃れることができない正統派Jホラーをぜひ劇場でご覧いただきたい。
文/山崎伸子