キーワードは“選択”&注目の新キャストは!? ついに配信スタートした「イカゲーム」シーズン2をレビュー!

コラム

キーワードは“選択”&注目の新キャストは!? ついに配信スタートした「イカゲーム」シーズン2をレビュー!

実力派俳優のなかで異彩を放つ意外なキャスティング

ギフン役のイ・ジョンジェやフロントマン役のイ・ビョンホンら韓国を代表する俳優が揃ったキャストで注目すべきは、イム・シワンとチェ・スヒョン(T.O.P)だ。イム・シワンは、アイドル出身でありながら俳優としても評価が高く、映画『ボストン1947』(23)やドラマ「ミセン~未生」などでその演技力の高さを目の当たりにした人も多いはず。監督は「彼の持つ独特の外見と演技の幅広さが、今回のキャラクターに最適だった」とし、「実際に観れば、なぜキャスティングしたのか皆さん納得いただけるだろう」と絶大な信頼を寄せている。誠実な青年から悪役まで演じ分ける実力派だが、今回演じるのは、仮装通貨詐欺でフォロワーにも損失を負わせたにもかかわらず逃げ腰のインフルエンサー、ミョンギ役。ゲームの現場で再会する元恋人ジュニ(IZ*ONEの元メンバーチョ・ユリ)との切なくも複雑な関係の行方もストーリーの一つの軸となっている。

一方、チェ・スンヒョンはアイドルグループ「BIGBANG」でT.O.P名義として活動する傍ら、俳優としてもキャリアを重ねてきた。ところが、近年は大麻吸引で摘発され、活動を休止していた時期もあり、韓国では、今回のキャスティング時に物議をかもしたことも。しかし監督は「彼が持つ俳優としての潜在力を信じている」と語り、彼にまさにフィットする役を与えたという。それは、ミョンギの動画の影響で投資した全財産を失ったラッパー役。どん底から体当たりでゲームに挑む姿には凄みさえ感じられ、まさに彼の新境地といえるだろう。

現実に潜む矛盾や格差をあぶりだすテーマ

監督はこれまでも『トガニ 幼き瞳の告発』(12)や『怪しい彼女』(14)など、社会的なテーマや家族ドラマを巧みに描く作品を手がけてきた。その創作の原点について、次のように明かす。

「私の場合、作品の始まりはほとんどが個人的な経験に基づいています。『怪しい彼女』には、祖母や母に対する思い出が大きく影響していますし、『イカゲーム』は、子どもの頃に友だちと遊んだ遊びやそこで感じたささいな出来事がインスピレーションになりました」

借金を抱えた息子ヨンシク(ヤン・ドングン)と、息子のためにゲームに参加する母グムジャ(カン・エシム)の親子
借金を抱えた息子ヨンシク(ヤン・ドングン)と、息子のためにゲームに参加する母グムジャ(カン・エシム)の親子 Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信

そこに社会問題や時事ニュースへの関心をかけ合わせることで、あの強烈なテーマ性が生まれるのだという。シーズン1で描かれた貧富の格差や借金地獄のリアリティは、決して絵空事ではなく、監督自身が日常で目にした社会の歪みをデスゲームという極端な形で具現化したものだ。シーズン2でも、コロナ禍以降に深まる「閉塞感」や「不信感」「国際的な対立」「生活の困窮」など、私たちが実際に体感する世界の問題を色濃く反映している。

「いまや紛争は、富裕層と貧困層だけに限られたものではありません。世代、性別、政治思想の違いなどでも激しくぶつかっている、そんな葛藤を描写してみたかった。こうした社会状況は悲しいことではありますが、ただ嘆くのではなく、それを直視して少しでも変えようとする努力が大切だと考えています。『イカゲーム』を観て共感する人々が増えれば、行動を起こす人も増えるのではないかという期待を抱いています」

ゲームを支配するフロントマン(イ・ビョンホン)
ゲームを支配するフロントマン(イ・ビョンホン) Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~2:独占配信中、シーズン3:2025年独占配信

新シーズンで伝えたいメッセージについて監督は「私たちに希望があるのか、わたしたちは世の中を変えられる存在なのかという質問を真剣に語り合いたいと思った」と語る。


アメリカの大統領選挙や韓国大統領の「非常戒厳」宣布を機に広がるデモなど、分断が一層浮き彫りになり、世界情勢が混沌を深めた2024年。その年末に放たれた「イカゲーム」シーズン2は、過酷なフィクションを通じて、現実に潜む矛盾や格差をあぶりだす。それが、次なる「選択」を考えるきっかけとなり、新たな希望に向かう糧になることを願っている。

文/桑畑優香


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