主演作『#彼女が死んだ』『勇敢な市民』が連続公開!韓国の“視聴率クイーン”シン・ヘソンが演じた魅力的なキャラクターたち

コラム

主演作『#彼女が死んだ』『勇敢な市民』が連続公開!韓国の“視聴率クイーン”シン・ヘソンが演じた魅力的なキャラクターたち

どんなジャンルでもどんなキャラクターでも完璧に演じ分ける!

こうして次回作が待たれる人気俳優となったシン・ヘソンが次に選んだのは「30だけど17です」(18)だった。17歳の時にバス事故で昏睡状態に陥ったソリが13年後に目覚め、周囲の助けで30歳になった自分を受け入れていく。歳はとったのに心は高校生のまま、という主人公の戸惑いと変化を繊細に演じていたのが心に残る。同年は1920年代が背景のドラマ「死の賛美」で実在したソプラノ歌手に扮し、イ・ジョンソクを相手に悲恋を演じた。翌年は「ただひとつの愛」で元天才バレリーナにして視覚障害者のヨンソという難役に挑んだうえ、気難しいヨンソとは違うタイプの、すでに故人となったダンサーの2役を務めた。

どんな役も余裕でこなしているように見えるのだが、バレリーナ役のために1日7時間ものレッスンを数ヵ月にわたって受けて撮影に臨んだという話を聞けば、いかに努力をしているかがわかる。自分のことを「憑依型の俳優ではなく、模索しながらコツコツと役を作り上げていくタイプ」だと分析。キャラクターにすぐに入り込めない分、演じている自分を客観視できて、作品が終わった後はすぐに役から抜け出せるそうだ。だからこそ、次々に全く違った人物を演じることができるのだろう。

コメディエンヌぶりを発揮した「哲仁王后(チョルインワンフ)〜俺がクイーン!?」
コメディエンヌぶりを発揮した「哲仁王后(チョルインワンフ)〜俺がクイーン!?」[c]Everett Collection / AFLO

真骨頂とも言えるのが、初の時代劇「哲仁王后(チョルインワンフ)〜俺がクイーン!?」(20-21)で演じた、現代のオレ様男が憑依した朝鮮時代の妃ソヨン役。外見は朝鮮の良家の子女のまま、大股を広げて悪態をついたり、女官たちに目の色を変えたりする様子が笑わせる。その一方で、控えめで淑やかな本来のソヨンとしての姿もしっかり演じて変幻自在ぶりを見せつけた。この役で演技派としての評価をさらに高め、誰もが認めるトップスターへとステップアップ。また、殺人容疑者となった母の無実を証明しようとする弁護士を熱演した『潔白』で映画初主演を果たした。

チ・チャンウクと共演した「サムダルリへようこそ」
チ・チャンウクと共演した「サムダルリへようこそ」[c]Everett Collection / AFLO

2023〜24年はますます精力的に活動。「生まれ変わってもよろしく」の前世の記憶を持ったまま転生を繰り返すヒロインをはじめ、個性的なキャラクターを次々に演じた。「サムダルリへようこそ」の挫折した人気カメラマン、「私のヘリへ〜惹かれゆく愛の扉〜」の解離性障がいの別人格を持つアナウンサーは、いずれもそれまで演じたことのない役柄だった。その一方で、ドラマだけでなく映画でもグッと存在感を増していく。実話を基にした『ターゲットー出品者は殺人鬼―』(23)では犯罪に巻き込まれる会社員役で主演。以前からスリラー作品に出演したかったというシン・ヘソンは、詐欺の被害者となっても泣き寝入りせずに犯人を追ううち、危険な目に遭う主人公を繊細に演じた。

 人気インフルエンサーの裏の顔を繊細に表現した『#彼女が死んだ』
人気インフルエンサーの裏の顔を繊細に表現した『#彼女が死んだ』[c]2024 NGENE FILM ALL RIGHTS RESERVED 

ドラマはどうしてもラブコメディやロマンスジャンルにかたよりがちなため、映画ではそうした要素のない作品をあえて選んでいると聞く。2020〜21年にかけて撮影され、韓国では24年にようやく公開された『#彼女が死んだ』で演じたのはタイトルが示す通り、殺された人気インフルエンサーのハン・ソラ。前半はソラの他殺死体を発見したピョン・ヨハン演じる不動産屋の視点で描かれるため、もしかしてシン・ヘソンは特別出演?とも思わせるがさにあらず、後半は彼女の独壇場となる。なかでも終盤の狂気を滲ませた演技は必見だ。学ぶべき点も共感もできないキャラクターだったと言いつつ、完璧に演じているのがすごい。


『勇敢な市民』のイ・ジュニョンとの対決シーンは圧巻!
『勇敢な市民』のイ・ジュニョンとの対決シーンは圧巻![c]2023 Content Wavve Corp. ALL RIGHTS RESERVED

そして『勇敢な市民』(23)では172cmの長身を生かして初の本格アクションに挑戦。非正規教師のソ・シミンが、隠していた格闘技の実力を発揮して、イ・ジュニョン扮する極悪生徒を成敗する様子を痛快に演じた。180度開脚の足蹴りに始まり、傷だらけの激闘まで、キレキレのシーンの連続で魅了する。自身を運動音痴だと言うが、「ただひとつの愛」の時にバレエレッスンを受けて以降、ずっとストレッチを続けてきたのが大いに役立ったそうだ。加えて半年近い徹底的なトレーニングの成果もあって、見事にアクション俳優へと変身。作品ごとに深みある演技で人の心を掴むシン・ヘソン。今後もさらに進化を続け、より成熟していくに違いない。

文/小田 香


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