今後の方向性や2025年の注目作は?賞レースで快進撃を続ける独立系映画スタジオ、A24の動向を探る
アメリカのインディペンデント映画を牽引するA24は、映像制作と配給の2本柱、会員組織構築や出版、マーチャンダイズの成功によって単なる独立系映画スタジオから、映画を起点とした複合的なポップカルチャープラットフォームへと変貌を遂げている。日本の配給会社であるハピネットファントム・スタジオは、2023年よりA24が世界配給権を所有する新作映画の独占的国内配給など、独占パートナーシップ契約を締結。そんなA24について、公開作品ラインナップ、制作予定作品など最新情報を一挙にお届けする。
2025年も映画賞レースで強さを発揮
A24は2012年にローマン・コッポラ監督の『チャールズ・スワン三世の頭ン中』の北米劇場配給からスタートし、2016年には初めて制作に携わった『ムーンライト』で第89回アカデミー賞作品賞を受賞、第95回アカデミー賞では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)の作品賞や主演女優賞など5部門、そして『ザ・ホエール』(22)でブレンダン・フレイザーが主演男優賞を受賞し、計6部門受賞という快挙を成し遂げた。海外映画祭にも積極的に出品し、『関心領域』(23、ジョナサン・グレイザー監督)が第76回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得、『ベイビーガール』(3月28日公開)主演のニコール・キッドマンが第81回ヴェネチア国際映画祭最優秀女優賞を受賞している。
アレックス・ガーランドやアリ・アスターら常連監督多数!次世代の才能に投資しする、制作スタジオとしてのA24
A24の姉妹スタジオ、2AMなどが制作する作品では、クリエイターの独自性を尊重し、自由な制作環境を約束するスタジオとしての信頼を得ている。『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)のアレックス・ガーランド監督は、来日時の取材においてこう語っている。「A24と仕事をする長所は、監督の“自由”にあると考えてます。(中略)例えば、『シビル・ウォー』のような映画でも、彼らは脚本を読んで、『いいね、資金を提供しよう』と言ってくれる。会話はそれですべて終わり。あとは私がそれを台無しにするか、いい仕事をするか、そのどちらかです。だから、私はA24と仕事をすることを選びます」。A24の常連と言えるアレックス・ガーランドやアリ・アスター、そしてバリー・ジェンキンス、ルル・ワン、ダニエルズ、セリーヌ・ソンといった次世代監督らに投資し、映画界の潮流を変える役目を担っている。
1月23日から2月2日までユタ州パークシティで行われている米インディペンデント映画の祭典、サンダンス映画祭ではA24の新作がいくつかプレミア上映された。アヨ・エディブリ、ジョン・マルコビッチ、ジュリエット・ルイス共演、30年前に失踪した伝説のアーティストの新作視聴イベントに参加したジャーナリストが経験する恐怖体験を描いた『Opus(原題)』。『The Legend of Ochi(原題)』は、“オチ”と呼ばれる謎の生物を恐れる人里離れた村を描く。「ストレンジャー・シングス」のフィン・ウルフハード、ウィレム・デフォー、そしてエミリー・ワトソンが出演。『If I Had Legs I'd Kick You(原題)』は、病弱な娘と不在がちな夫に挟まれ追い詰められたリンダ(ローズ・バーン)を中心としたコメディ。グレタ・ガーウィグ主演の『Yeast(原題)』(08)で注目を集めたメアリー・ブロンスタインの久々の監督作。2023年は『パスト ライブス/再会』(23)、2024年は『LOVE LIES BLEEDING(原題)』と『I Saw The TV Glow(原題)』などがプレミアを行い、サンダンス映画祭とA24はとても相性が良い。