放送作家としても活躍!どきどきキャンプ、佐藤満春が『ショウタイムセブン』のリアリティに唸る「作り手側としての脳が動いてしまう」
「(犯人役は)本当にお見事なキャスティングだったと思います」
また、リアリティを感じつつもストーリー展開や着地点は「まったく予想がつかなかった」と告白。特に予測不能のラスト6分については「折本が“あのテンション”になっていくのは想像できませんでした」と興奮気味に語る。「細かいことは映画を観てのお楽しみ!ですが、彼のある種の変態性というか、自分の首を絞めてでも真相を暴いていく時の感じはワクワクがとまらなかったし、生放送にかける気持ちはわからなくないと思いました。あの時の折本の一連の行動はすごく気持ちよく感じたし、脳汁出てるんだろうなって思いました(笑)」と、誰もが驚く折本の最後の選択、そしてその行動原理が見えるまでの心理描写は絶品だったとし、「阿部さんの演技の賜物だと思います!」と強調。
いっぽうで、佐藤が本作で一番引き込まれたキャラクターは、ベールに包まれている犯人だという。「まず声がいいと思いました。声であの場をずっと支配している。最後に姿を見せるんですが、それまで声だけで引っ張らなきゃいけないのは、相当難しかっただろうし、あれができる俳優ってなかなかいない。姿を見せた時のインパクトやリアリティもものすごくて、本当にお見事なキャスティングだったと思います。演技力と声のすごみに惹き込まれました」と大絶賛。
さらに井川遥が演じている、折本の過去の盟友で記者の伊東については「かつて、共に数々の特ダネを挙げてきた折本の感情を汲み取りながらやりとりする感じに、哀愁のようなものを感じました。2人の過去について多くは描かれていなかったけれど、どこか寂しさみたいなものもあって。折本との共闘感が伝わる表情がすごくいいなと思いました」としみじみ。吉田鋼太郎が演じた視聴率第一主義のプロデューサー東海林については「実はあんな人はテレビ業界にはいないです(笑)。あのくらいの立場の人ってあんなにおちゃらけていません。だけど、彼をおちゃらけたキャラクターにすることで、映画らしくなっているというか、エンタメ作品に必要な役割をこなしていた感じがありました。そういった意味で、緊張感のある作品に緩急を生みだしているのはさすがだと思いました」と、エンタメ性とリアリティのバランスに感心したという。
「本来あり得ないことなのに、本当に起きちゃっているような錯覚に陥る」
それでは、もし自分があの場にいて、放送の決定権を持っていると仮定した場合、どんな行動をとるのだろうか。「誰も傷つかないのが大前提ではあるけれど、あの場にいたら、怖がっているだけじゃない放送人は多いと思います」と客観的に分析する。「映画では描かれていないけれど、本来このレベルのハプニングが起きたら、社長まではいかなくても権限のある人には連絡が入っているはず。それでもオンエアが止まらなかったのは、数字が取れているという判断を誰かがしているってことを意味しているんです。偉い人が止めないなら、現場にいる僕もそれに従って放送は止めない気がします」と折本のようにニヤっとする場面も。
「ただ、僕の場合はカメラは回し続けるけれど放送はしないという選択をすると思います。放送されているかどうかは犯人を含めてスタジオのなかにいる人にはわからないので。素材としてV(TR)を撮り、『実は放送していませんでした』というオチにすると思います。実際に起きたら、という仮定の話ですけれどね」と、佐藤だからこそ思いつく裏技を教えてくれた。
最後に、映画のおすすめポイントを聞くと「不思議なリアリティ」とまとめた佐藤。「本来あり得ないことなのに、本当に起きちゃっているような錯覚に陥る。そこが没入感につながっているんじゃないでしょうか。ラスト6分の展開にもう1回観ようとも思えます」とリピート鑑賞を宣言し、「改めてチェックしたいのは折本の表情です。ラストを知ったあとに、映画の冒頭、午後7時にラジオが始まる折本のしゃべり出しのところを観たら、また違う感想を持つと思うし、発見もあると思います」と味わい尽くしたい作品だと話していた。
取材・文/タナカシノブ