アウトローたちが挽歌を奏でているような味わいの大活劇『室町無頼』など週末観るならこの3本!

コラム

アウトローたちが挽歌を奏でているような味わいの大活劇『室町無頼』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、室町時代を舞台にアウトローたちの戦いを描く戦国アクション、「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」の劇場アニメ化、都会から南三陸に移住したサラリーマンを主人公にしたヒューマンコメディの、ワクワクする3本。

リアルよりもエンタメに寄せた痛快作…『室町無頼』(公開中)

【写真を見る】アウトローたちの知られざる闘いを描きだす(『室町無頼』)
【写真を見る】アウトローたちの知られざる闘いを描きだす(『室町無頼』)[c] 2016 垣根涼介/新潮社 [c]2025「室町無頼」製作委員会

大飢饉と疫病が蔓延する「応仁の乱」前夜の京を舞台に、大泉洋演じる蓮田兵衛を中心にしたアウトローたちが、幕府を相手に一揆を起こすアクション巨編。リアルよりもエンタメに寄せた痛快作で、剣豪でもある蓮田はあくまでカッコよく、彼と師弟関係になる才蔵は「六尺棒」の達人に成長し、まるで鬼のように金棒を振り回す巨漢や、弓の名手のアウトローも出てくる。

少数の精鋭が圧倒的な勢力を持つ幕府軍に戦いを挑むというのは、ほとんどアニメのヒーローもののノリだが、それに人間ドラマとして深みを与えているのが、大泉と彼の旧友でいまは幕府軍の手先になっている宿敵・骨皮道賢を演じた堤真一の関係性。互いを憎からず思う二人が、逃れられない対決へと向かっていく流れは、西部劇の無頼漢と保安官との一騎撃ちのようであり、また演じる二人の年齢もあって、アウトローたちが挽歌を奏でているような味わいがある。新年を飾る、見どころ満載の大活劇だ。(映画ライター・金澤誠)

いま困難に立ち向かっている人にこそ観てほしい…『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』(公開中)

「初音ミク」を描く初の映画となる『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』
「初音ミク」を描く初の映画となる『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』[c]「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」製作委員会

“歌えないミク”という、衝撃的なタイトル。そんなセカイの危機に、Leo/needやMORE MORE JUMP!など、ゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」でお馴染みの人気ユニットが総出演し、“閉ざされた窓のセカイの初音ミク”のために奔走する。ゲームの世界観を踏襲しているため、多少の予備知識は必要だが、ゲームとは一線を画したオリジナルストーリーを楽しむことができる。人気ボカロPのDECO*27が手がけた各ユニットの新曲も聴けて、それぞれの世界観あふれるライブシーンは見応えたっぷりだ。

本編の前には主演の初音ミクによる舞台挨拶があり、本編終了後には「アフターライブ」として週替わりで各ユニットの新曲のフル尺を聴くことができるほか、劇中のいたるところに人気クリエイターの作品が登場するなど、シリーズのファンには嬉しい伏線が盛りだくさん。最後に待ち受けるのは、未来への高揚感と別れ。旅立ちの春に向け、いま困難に立ち向かっている人にこそ観てほしい作品。(ライター・榑林史章)

痛快かつ温かな後味も絶品…『サンセット・サンライズ』(公開中)

菅田将暉、宮藤官九郎&岸善幸が送るヒューマンコメディ『サンセット・サンライズ』
菅田将暉、宮藤官九郎&岸善幸が送るヒューマンコメディ『サンセット・サンライズ』[c]楡周平/講談社 [c]2024「サンセット・サンライズ」製作委員会

コロナ禍によるリモートワークの波に乗り、東北・南三陸の小さな町にお試し移住した東京の大企業に勤める主人公が巻き起こす、騒動と人々との交流を描く。「あゝ、荒野」(17)、『前科者』(22)、『正欲』(23)など、これまでヒリヒリ系の佳作&意欲作を放ってきた岸善幸が、楡周平の同名小説を映画化。宮藤官九郎が脚本を担当し、そこはかとないユーモア漂う原作が、オフビートな笑いを連発させた後で思い切り泣けるエモーショナルな感動作に仕上がった。過疎の町を舞台に現代日本が抱える社会問題を織り交ぜながら、心躍る“お仕事ムービー”になっているのもオツ。

また東北の“美味しいもの”がふんだんにちりばめられた食ムービーの楽しさも。リモート飲み会で、魚介類をはじめ東北の食卓をドヤ顔で見せつける、主人公に扮する菅田将暉のコメディセンスが要所要所で光る。町のマドンナ(井上真央)をめぐる(狙う!?)男たちの嫉妬合戦やマウント合戦にも大笑い。思い焦がれるも不器用な男たち、竹原ピストルらの味わいも最高!まだ残る震災の爪痕や傷、家族、恋、食、都会と田舎、その他の要素をたっぷり盛り込みながら、全て過不足なく堪能させる。そして豊かさとは、心の再生や我々はどう生きていくかまで考えさせる深さ、バランスの良さに舌鼓!数々の未曽有の事態に巻き込まれた日本を総括してくれるような、痛快かつ温かな後味も絶品だ。(映画ライター・折田千鶴子)


映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼