松坂桃李と芳根京子が『雪の花―ともに在りて―』から考えた、夫婦の関係。「『じゃあ、行ってくる』という言葉の重みや深みは、現代とは段違い」
「“2人は一生を共にする、ずっと一緒だ”という感じがあって、すごくすてきな夫婦の愛の形」(芳根)
――さて、お2人とも時代劇は何度も経験されていますが、町医者とその妻という役どころを踏まえて、本作だからこその所作や動きや仕草など、これまでと違うところがありましたか?
松坂「これまで『真田十勇士』の忍者も含め、ほぼ武士系の役ばかりだったので、その時代の日常に近い町医者の役だと聞いて、単純にうれしかったです。武士ではない所作とはなんだろう?と考えた時に、まず腰に刀を差して歩かないのか、と。そういう人の振る舞いや、当時の医者が人々を診る際の所作など、武士とは違う振る舞い方を勉強できて、とても新鮮でした」
芳根「この時代ゆえの品のよさや美しさはベースとしてありつつも、今回は “こうでなければいけない”という概念を取っ払って現場にいられました。それは自分が時代劇の経験を積んできたからなのか、この作品だからなのかは正直、わからないのですが…。ただ千穂は“男之介”と呼ばれるような存在でもあるので、この時代にあってもチャキチャキしていて少し豪快さが見えたほうが、より魅力的に映るのではないかな、ということは意識しました」
――不屈の精神で道を切り開いていく良策と、良策を助けようとする頼り甲斐のある妻・千穂の夫婦関係を、どんなふうに感じましたか。
松坂「当時はなにかを伝えるにしても、“文を送る”という手段しかなかった。そうなると、『じゃあ、行ってくる』という言葉の重みや深みは、現代とは段違いだったんだなと感じました」
芳根「確かに『ご無事で』という言葉の重さもそうですよね」
松坂「この信頼関係や愛情の深さは、時代劇だからこそ描き得るものだと思いますね」
芳根「互いに互いを健気に信じる気持ちが強いですよね。どっちが欠けても成功しなかっただろうなと思いますし、2人でワンセットというか、“2人は一生を共にする、ずっと一緒だ”という感じがあって、すごくすてきな夫婦の愛の形だと思いました」
「黒澤明監督が映画撮影で使われた道具をお借りしたり、スゴイ現場でした」(松坂)
松坂「お薬を2人で作るシーンも、町医者の日常がすごく感じられて好きなんです。しかも2人が作る丸薬も、当時のものを使って作っていて。本来なら博物館に陳列されているであろうものが、そこに置いてある」
芳根「言うなれば、撮影現場では私たちが博物館側にいた感じですよね(笑)」
松坂「そうそう、僕らはそっち(陳列物)側で芝居してる感じでおもしろかったです(笑)。黒澤明監督が映画撮影で使われた道具をお借りしたり、スゴイ現場でした」
芳根「ある殺陣のシーンでも、お互いを励まし合って心強くて。そんな夫婦、あまりないですよね(笑)」
松坂「普通はどちらかが守る側になるけれど、千穂も立ち回れちゃうので(笑)、そういう場面で守る必要があまりない」
芳根「“あなたはそっち、私はこっちを”、みたいな(笑)」
――中盤、良策が7人の輩を倒す比較的長い殺陣シーンがありますが、それもワンシーンワンカットで一発OKだったそうですね。
松坂「ただ、そこに至るまで何度もリハーサルやホン読みを重ねたうえでの一発OKなんです。特にアクションシーンは、リハーサルを何度も重ね、アクション部の人たちと入念に相談し、画角もちゃんと決まっている。どこからどこまでが見切れるか、それもすべて計算してリハーサルを経たうえでの本番です」
――すんなり一発でOKが出ちゃったけれど、もう1回やりたい、みたいな気持ちにはならないですか?それともガッツポーズな感覚ですか?
松坂「ガッツポーズに近いですね。もう1回やりたいとは、まったく思わないですよ(笑)」
芳根「ですよね。ただもう、その1回に賭けて、すべて出し切りますからね」
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