松坂桃李と芳根京子が『雪の花―ともに在りて―』から考えた、夫婦の関係。「『じゃあ、行ってくる』という言葉の重みや深みは、現代とは段違い」
「小泉監督の現場自体が、美しい現場ですね」(芳根)
――なるほど。画角も決めて本番に臨まれるということですが、逆に型にハマり込むおもしろさというのは感じましたか?小泉監督作品は、美しい風景の中、美しい精神性を描く、そうした“美を取り込んだ画”が切り取られている感覚があるのですが。
松坂「いま、初めて確かにそうかもしれないと思ったくらいで、型の中でやらせていただくという意識はまったくありませんでした。それだけ小泉監督が演者に対して、お芝居のしやすい環境を徹底的に作ってくださったということだと思います」
芳根「そうですね、私もその感覚はまったくないです。ある意味、まんまとハメられていたのかもしれませんが(笑)。本当に役者思いの監督なので、必要のない緊張を排除してくれている。小泉監督の現場は、雑味のない澄んだものだけを感じ取らせてくれて、そこに居させてくれる。もちろん映画ですから“画”を切り取ってはいますが、どれだけ広げても世界観は変わらない気がします」
――やはり本作も、“画”の美しさは印象に強く残りますね。
芳根「小泉監督は自然を味方にする方だと強く感じました。今回も“雪が降り次第はじめよう”とか、本当に自然に身を任せるというか。そういうものも含めて、すごく懐の深い方だと感じます。すべてを受け入れ、信じて臨まれている印象が強い。だから安心感があるんです。もちろんとても張しますが、わからないことがあればハッキリ伝えられますし、そこでお話しもしてくださる。現場自体が、美しい現場ですね」
――監督のみならず、撮影の上田正治さんのほか、照明や録音そのほかに至るまで往年の日本映画の現場を知る方々がスタッフとして参加されています。そういう“イズム”的なものも感じましたか?
松坂「上田さんが多分、年齢も一番高いと思いますが、カメラを担いで平気で山を登っていらっしゃる。驚異的に現役感がバリバリで、本当に皆さんスゴかったです。なんと言っても本番にかける集中力と熱量がすごい。だから終わる時間も驚異的に早いんですよ」
芳根「1カットしか撮らない日もありましたしね」
松坂「多くて3シーンくらい。それで、余った時間で翌日のリハーサルをやったりしました。そういう時間の使い方に、皆さんの体のリズムも現場も慣れているというか」
芳根「だからこそ、とても緊張をするのですが、一瞬“バン”と緊張が上がって、“はい、解ける!”みたいな感じ。う~ん、心臓には悪い!?(笑)」
松坂「ね(笑)。でも全体としては、みんなにとても優しい現場でした」
取材・文/折田千鶴子
※本作で撮影監督を務められた上田正治さんが1月16日、87歳で逝去されました。編集部一同、謹んでお悔やみ申し上げます。
ワンピース:¥29,700/アメリ(アメリヴィンテージ) 03-6712-7965
その他:スタイリスト私物