清水崇と城定秀夫が初対談!多作なトップランナーが語り合う、日本映画界の現状
「商業ベースで続けていくには、数字の責任を監督も持つべきだと考えています」(清水)
――お2人ともキャリアは低予算のVシネマから出発していますね。
清水「元々は、Vシネといえばヤクザかエロかだったのが、『リング』でブームになってから急にホラーが増えたんです」
城定「Vシネ界隈では、オリジナルビデオ版の『呪怨』の衝撃は大きかったですね。Vシネでああいうホラーはなかったですから」
清水「今もそうですが、Vシネの現場は低予算だったので、『呪怨』の時は9日で2本撮りました」
城定「そんな感じでしたよね。でも、だからこそ色々工夫が生まれるジャンルでもありますね」
清水「そうですね。限られた予算や日数でどういうふうに撮るか…腕試しですね」
城定「多少失敗してもあまり文句を言われないから、思い切ったことができるメリットもありますね。そういう、低予算でチャレンジできるジャンルは続いてほしいなと思います」
清水「低予算で一つヒットすると、恵まれた環境で次を撮れることもあるけど、潤沢な予算があっても成功するとは限らない」
城定「それもまたおもしろいですよね。必ずしも予算や時間があればいい、というものでもない」
――低予算映画と予算の潤沢な映画、それぞれのメリット、デメリットはなんでしょうか?
城定「低予算だとお金がないことの不自由さはあるけど、そのぶん自由にやれます。メジャーだとお金があるから派手なシーンができたりするけど、プロデューサーがたくさんいて、色々と注文が多いこともある。だから僕は作品ごとに、職人的に楽しんでいますね」
清水「予算が大きくなると宣伝費も上がって期待値も上がりますから。ある一定の数字を達成しないといけない責任を、監督は持つべきだと思っています。商業ベースで続けていくとはそういうことなんだと」
城定「ヒットしないとどれだけの人が不幸になるのかと考えると、責任重大ですよね」
清水「そうですよね。次の企画も通りにくくなるのもありますし。その場その場でどうしたいかだけでなく、次につながるかどうかは意識しています」
城定「それらを全て凌駕して面白いものをつくるという才能もあるけど、僕はそういうタイプではないので、求められているものをつくることを大事にしています」
「企画はどれが成立するか分からない。同時に進めないと、ポシャったときのショックが大きいんです」(城定)
――お2方とも非常に多作ですが、多作であることにメリット、デメリットは感じますか?
清水「振り返ってみると、忙しいのが楽しくてしょうがない時期は多作だな、とか、プライベートで色々ネガティブなトラブルがあったときは、なんだかあんまり撮ってないな、とかありますね」
城定「映画ってどれが成立するか分からないんですよね。5年かけても実現しない企画もたくさんあるので。だから僕は来たものはどれだけやれるか分からないけどやってみようと。そしたら、意外と成立する本数が多くて、そうなると、同じ年にすごい本数が重なる」
清水「このあいだ数えてみたら、僕はこの5年で7本撮っていました」
城定「でも全部早く撮ったわけじゃなく、それぞれ2、3年かかっていたりしますよね。10年かけても成立しない企画もある。同時に進めないと、ポシャったときのショックが大きいんですよ」
清水「そうなんですよね。日本の場合、いまだに企画開発費があまり出ないケースがほとんどなので、プロデューサーや監督は完成するまでまったくお金にならなかったりもして…」
城定「すべてではないですけどね。もちろん、途中でダメになったらそのぶんは支払います、という作品も、特に最近はだんだん増えてきてます。じゃないと迂闊に仕事を受けられない」
――最後に、今後撮っていきたいものはありますか?
城定「いままで実はホラーはほとんどやってきていないので、正面から取り組んでみたい気持ちはあります。今回『嗤う蟲』は、ストレートなホラーとはちょっと違ったので。いままでは想像つかなかったところがあったんですが、今回『嗤う蟲』を経験したことで、やってみたいなという気になりました」
清水「それは観てみたいですね。僕は、もうずっと言ってるんですが、コメディがやりたいです。ずっとやりたい企画があるんですが、なかなか機会に恵まれなくて。でも新しいホラー映画がどんどん出てくると、負けてられないな、という気になってまたやりたくなるんですよね。城定さんが撮ったらまたホラーをやろうってなるんじゃないかな」
取材・文/近藤亮太