いま、室町時代がアツい!現代社会に通じるテーマで“応仁の乱”前夜を描く『室町無頼』に注目
異常気象に格差社会、あらゆる状況が現代と重なる
アニメーション作品では、スタジオジブリの『もののけ姫』(97)が具体的な時期を明示していないものの室町時代を舞台としており、湯浅政明監督の『犬王』(21)は実在の犬王が活躍した時期や第3代将軍足利義満が登場することなどから、室町時代初期が舞台となっていることがわかる。
また現在『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』が公開中の「忍たま乱太郎」シリーズは室町時代の末期、一般的には戦国時代と呼ばれる時代が舞台となっている。とはいえ同シリーズの特徴は、いわゆる“戦国らしい”描写もありつつも、市井の暮らしなどで室町時代の文化を感じることができるということ。『ドクタケ忍者隊最強の軍師』においても、飢饉にあえぐ人々や悪い城主が登場するなど、『室町無頼』で描かれた時代背景との共通点がいくつも見受けられる。
近年では、この室町時代の社会情勢が我々の生きる現代とよく似ていると言われるようになった。応仁の乱よりも13年前の1454年には東北地方で享徳地震と呼ばれる巨大地震が発生。また、世界的な異常気象に端を発して水害や干魃が全国各地で相次ぎ、追い討ちをかけるように台風の上陸も重なって1459年には長禄・寛正の飢饉が発生。京都だけで2か月足らずのうちに8万人が餓死するという惨状は、『室町無頼』の序盤でも描写されている。
さらに疫病も蔓延するなど庶民の暮らしが大きな打撃を受けるなか、無能な権力者たちは享楽の日々を過ごし、貨幣経済が進むなかでかつてないほどの格差社会ができあがることになったという。対して現代の社会も、東日本大震災に新型コロナウイルスのパンデミック、毎年のように相次ぐ異常気象による災害に物価の高騰、失敗だらけの政治によって苦しめられる庶民と、広がる格差。これほどまで“戦国前夜”と通じる時代があっただろうか。
まさに暗黒のような時代のなかで、世の中を変えるために立ち上がった兵衛たちアウトロー(=無頼)の生き様と戦いを描く『室町無頼』は、先行きが見通せない現代を生きる我々にも共感できる、そして共感だけでなく未来を変えるためのヒントを提示してくれる作品としても見ることができる。いま注目すべき“未知の時代”こと室町時代の人々の熱さを、劇場のスクリーンでその目に焼き付けてほしい。
文/久保田 和馬