『366日』がついに動員ランキングのトップへ!「2024年全国映画概況」から見える、洋画復権へのカギは?
1月31日から2月2日までの全国映画動員ランキングが発表。1月10日の公開から若い世代を中心に口コミが拡散し、毎週のように順位を上げてきた『366日』(公開中)が、公開4週目にしてついにトップの座に。週末3日間で観客動員18万1000人、興行収入2億2500万円と、前週比90%を超える成績を維持し、累計で動員106万人&興収13億円を突破した。
“邦高洋低”がますます加速した2024年の映画界をプレイバック
今週は動員ランキングに触れる前に、1月31日に一般社団法人日本映画製作者連盟が発表した「2024年全国映画概況」(1年間の動員や興収、公開本数やスクリーン数などをまとめた統計資料)の内容を簡単に分析していきたい。昨年1年間の全国の映画館への入場人員は1億4444万1000人と、前年比92.9%。興行収入も前年比93.5%の2069億8300万円と、いずれも前年をわずかに下回る結果となっている。
興行収入全体に占める邦画と洋画の構成比は75.3%と24.7%。コロナ禍で洋画のビッグタイトルが不足していた2020年と2021年をイレギュラーと捉えて除外すると、1961年以来63年ぶりに洋画の比率が25%を割り込んだことになる。もちろんこれは比率の話なので、邦画にメガヒット作品があれば自ずと偏りが出てしまうもの。邦画で興収100億円を超えた作品が2024年は2本(『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』が158億円、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が116億4000万円)。この2本で全体の13%を占めている。ちなみに洋画は『インサイド・ヘッド2』の53億6000万円(全体の2.5%)が最高成績だ。
例えば2023年は“100億超え”の邦画が2本(両作で全体の13.4%)で洋画も1本(全体の6%)。2022年も邦画が3本(全体の23%)、洋画が1本(全体の6%)。そう考えると、洋画から100億超えのメガヒット作品が出なかったことも比率の低さの一因ではあるのだが、ここ数年、日本のアニメ映画を中心にリピーター戦略の活発化で100億超えが頻発しているとはいえ、そのハードルの高さは言わずもがな。そこに期待するのはなかなか酷なものがある。
また、ヒットの目安となる興行収入10億円を突破した作品は(2023年12月公開作品も含む)、邦画が31本で洋画が10本。2006年から19年連続で邦画が上回ることとなり、洋画は2023年よりも5本減少。この“10億超え”の洋画タイトルの興収が全体興収に占める割合は12.2%と、前年の21.8%(うち6%が先述の100億超えタイトルではあるが)から比較すると大幅に減少している。
これを踏まえると、洋画の復活の糸口となるのはメガヒット作を生むことよりも、“10億超え”のヒット作を安定的に供給していくことしかないだろう。かつて“洋高邦低”といわれた2000年前後、とりわけ『ハリー・ポッターと賢者の石』(01)のメガヒットがあった2002年は、邦画の興収比率は27.1%しかなく、邦画の“10億超え”も17本しかなかった。その後数年で、毎年安定して30本前後の“10億超え”が生まれて土台が築かれていき、現在の“邦高洋低”に逆転したのである。
昨年1年間の動員ランキングを振り返っても、1位を獲った洋画タイトルはわずか6本。それなりの規模のタイトルも初週にランクインしても2週目3週目には圏外に沈むことが多く、ほとんどの週でトップテン圏内の大半を邦画が占めている。邦画が元気なのはとてもいいことなのだが、洋画が目に見えて元気がない現状のままでは、いずれ邦画もそれに引っ張られ、映画文化全体が衰退する危険性もある。受け手である観客の趣味趣向は変えることはできないが、作り手と受け手の間にいる送り手にはまだできることがあると、自戒も込めて記しておきたい。