『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』近藤亮太監督と「或るバイトを募集しています」くるむあくむが語り合う、次世代の“恐怖”のつくりかた
VHSの粗い映像は、なぜ怖いのか?
ーーVHSも然りですが、どうして粗い映像が怖く見えるのか。お2人の考えをお聞かせください。
くるむあくむ「粗いということは、画質が低い。不鮮明である。人間は、わからないものが怖いという潜在的なものが映像においてもあるんじゃないかと思います。粗いことは、懐かしさを感じるのと同時に、記憶の曖昧さを感じるところでもある。VHSがホラーに活用できるコンテンツというのはそういうところにあるんじゃないかと思っています」
近藤「たしかに。不鮮明であれば実はVHSじゃなくてもいいんですよね。昨年『行方不明展』に参加した時に、1分くらいのPR映像をたくさん撮ったんです。そのなかでニンテンドー3DSで撮ってる映像も使ったんです。ニンテンドー3DSはデジタル映像ですけど、ガラケーと同じように、いまテレビなどで観られるフルHDの映像と比較すると、6分の1ぐらいでしょうか。編集の時にはかなり拡大しないといけないんですけど、おどろくほど画質が粗いんです。でもそれでしか得られない感じがあって、意外とちょっと前のメディアの映像のデータの足りなさもVHSの代替になるのかもしれません」
ーーモキュメンタリーホラーの最前線で活躍するお2人ですが、今後やってみたいことは?
くるむあくむ「モキュメンタリーホラーは、いまかなりブームがきています。一見するとやり尽くされている感じはありますが、なんでもできるジャンルだと思っています。近藤さんと一緒になにか作りたいなと思っているんですけど…」
近藤「そんな、不器用な告白を…(照)。ぜひやりましょう。くるむあくむさんもご自身で映像つくられていますし、お話やシチュエーションとか、あれだけ豊富で、断片づくりの上手さがずば抜けていると思っています。それはほかの作家さんとはまた違う種類の才能だと感じているので、一緒に開発して、映像や映画でやれたらおもしろいだろうなと思いますね」
ーーくるむあくむさん自身、長編を手掛けてみたいという意欲は?
くるむあくむ「撮りたいですね、長編。いままで短編ばかりなのですが、それは日常に近いテーマで図らずとも長編である必要がなかったからなんです。今年はぜひ挑戦してみたいですね」
近藤「映像まで全部自分でやっているんですよね?ホラー表現であればなんでもやるってのはすごいと思います」
くるむあくむ「近藤さんも全部一手に担っている方じゃないですか…!」
近藤「僕は映像畑の人間ですから。この場で言質を取ったということで、くるむあくむさんといい感じのタッグができればと期待しております」
“もう一つの怪異”を実演…吉田ヤギ登壇の舞台挨拶が決定
2月15日(土)には、ヒューマントラストシネマ渋谷にて、劇中で披露する怪談が大きな話題となった、民宿の息子の雪斗役を演じた吉田ヤギと近藤監督が登壇する「スピンオフ企画あり舞台挨拶」の開催も決定している。このスピンオフ企画は近藤監督曰く、「雪斗が物語のどこかの時間軸で体験した“ある時間”についてシナリオを新たに書きまして、それを上映終了後にその場で演じてもらう」とのこと。チケットは現在、劇場のオンラインチケットシステムと窓口にて発売中。
翌2月16日(日)には、近藤監督の地元である札幌にて、凱旋舞台挨拶も決定。サツゲキで14:20より開催される。こちらのチケットも劇場のオンラインチケットシステムと窓口にて発売中となっているので、ぜひチェックしてほしい。
まだまだ劇場数も増え続け、旋風が続く『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』。まだご覧になっていない方はもちろん、すでに本編をご覧になった方もこの機会にもう一度劇場に足を運び、“もう一つの怪異”を目の前で目撃してみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬