ベストセラー小説が次々に映画化!“イヤミスの女王”沼田まほかるとは?
読んだ後、イヤ~な気分になる。そんな後味の悪いミステリー“イヤミス”。代表的な作家では湊かなえ、真梨幸子が挙げられるが、いま映画界から注目されているのが沼田まほかるだ。奇遇にも彼女の小説の映画化作品が1か月間に2本相次いで公開される。そんな沼田まほかる作品の魅力とは?
56歳で文壇デビューと作家としては遅咲きの彼女。いまや“イヤミスの女王”として大勢の本好きを魅了しているが、それまで離婚を経て実家の寺で僧侶となり、友人と起こした会社が倒産したりと波乱の人生を送ってきた。そんな経験も文筆家への糧となったのかもしれない。
04年の処女作「九月が永遠に続けば」で第5回ホラーサスペンス大賞を受賞するなど、デビュー時から話題を集めたが、沼田の知名度をグンと上げたのは11年発表の「ユリゴコロ」。刊行されると既刊まで引きずられるように売れ出し、出版業界の“事件”とまで言われるほどに。そこから、“まほかるブーム”が始まった。
「ユリゴコロ」は先月末に実写化映画が公開されている。過去と現在にわたって“人間の死”を心の拠り所“ユリゴコロ”とする女性と、彼女を取り巻く人々の数奇な人生が描かれる。映画では吉高由里子が殺人犯を演じたが、彼女が“人間の死”を求め人を殺めていく様子はまさに恐怖。愛する人と出会っても、その拠り所から抜け出せない複雑な思い、そして、散り散りになった謎がつながっていく描写は圧巻だ。
続いて「ユリゴコロ」同様に代表作と言われている「彼女がその名を知らない鳥たち」。こちらは10月28日(土)より映画が公開される。フラフラ生きる女性・十和子(蒼井優)と、彼女に執着する男・陣治(阿部サダヲ)とのいびつな愛がつづられる。原作は“共感度0%”と言われているとあって、2人の生活や言動は理解し難いものがある。ただそれが“愛”と知った時、誰もがハッと息をのんでしまうはず。これを愛を呼ぶのか?これこそが究極の愛なのか?と、自身に問いかけたくなる物語も沼田作品の魅力だろう。
「ユリゴコロ」と「彼女がその名を知らない鳥たち」は沼田の小説のなかで、3本の指に入ると言っても良い人気作。人間の業を感じさせる彼女の物語は、読後いや~な気分に襲われつつも、何故か満足度が高い。今秋、映画とあわせて沼田ワールドに浸ってみてほしい。【トライワークス】