実在の政治スキャンダルも題材に。ポリティカル・サスペンスの要素も備えた「キャプテン・アメリカ」シリーズの魅力
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』がついに公開された。「あれ、キャプテン・アメリカって引退したんじゃ?」と思う人もいるかもだが、たしかにキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)で一線を退いた。この時、年老いた彼からキャプテン・アメリカの盾を託されたのが、盟友であるファルコンことサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)。新作では、次代のキャプテン・アメリカとなった彼が、新たな脅威に立ち向かうことになる。
主人公は変わっても、「キャプテン・アメリカ」シリーズならではのカラーはキープしている。正義感の強いヒーローが暗闘に巻き込まれるという、ポリティカル・サスペンスとしての骨組みだ。これはMCUでは珍しい要素で、「アイアンマン」シリーズには希薄だったし、「マイティ・ソー」、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズでは起こりえない!?ともかくシリーズをたどりながら、この要素を説明していこう。
スーパーソルジャー計画に立候補し、キャプテン・アメリカとなったスティーブ・ロジャース
1作目の『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(11)は、言うまでもなく元祖キャプテン・アメリカ、スティーブ・ロジャースの初登場作だ。1942年、第二次世界大戦期のアメリカで、彼は軍への入隊を志願するも、虚弱体質ゆえに何度も却下され続けていた。そんな彼の折れない善良な精神を買った科学者が、体力を飛躍的に増強させる「スーパーソルジャー計画」に引き入れる。かくして、たくましい肉体と高い戦闘能力を得たスティーブは、ナチスの科学研究専門組織ヒドラとの戦いに臨み、勝利する。“誰も殺したくないが、悪党には我慢できない”というスティーブの正義の精神は、ここで明確に打ち出された。
全人類を監視下に置くインサイト計画を阻止する戦いが勃発
しかし、この戦闘によりスティーブは北極上空で消息を絶ち、70年後に冷凍冬眠状態から目覚めるという数奇な人生を歩むことになる。2作目『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』(14)の舞台は、この時代、すなわち現代。大戦の頃は戦うべき相手が明快だったが、現代では悪党が誰なのかわからない。スティーブはそんな闇に翻弄される。なにしろ、スティーブを保護した極秘諜報機関S.H.I.E.L.D.には裏切り者が潜んでいる。また、敵が放つ凄腕の刺客ウィンター・ソルジャーの正体は、大戦期に死んだと思われていた彼の親友バッキー(セバスチャン・スタン)だ。彼もまた、ある組織の手によりスーパーソルジャー化し、記憶喪失状態で生かされていたのだから闇は深い。
一方で、本作では「インサイト計画」なる、テロを未然に防ぐために全人類を監視下に置くという、かなり乱暴な計画が遂行されようとしている。これは権力による個人情報の収集という点で、ウォーターゲート事件との類似が指摘されることも。いずれにしても、ここからシリーズのポリティカル・サスペンス色は俄然、深まる。迷えるスティーブが、ここで味方として信頼を置いたのが、退役軍人であるサムだった。