カン・ドンウォンが語る結婚観と仕事への情熱。「結婚できるかわからない」
抜群のルックスと演技力を兼ね備え、日本でも高い人気を誇る俳優カン・ドンウォン。クライムアクション映画『MASTER/マスター』(11月10日公開)では初の刑事役に挑み、カーチェイスや肉弾戦など体当たりアクションをたっぷりと披露。クールな佇まいに、熱い正義感がみなぎる男を演じきった。アクションの撮影では、なんと「顔から血がダラダラ出た」というほどのケガを負ってしまった彼。作品に身を捧げる情熱、気になる結婚観までを直撃した。
史上最凶の事件を引き起こした詐欺師・チン会長(イ・ビョンホン)、彼を追う知能犯罪捜査班長のキム(カン・ドンウォン)、会長の側近で天才ハッカーのパク(キム・ウビン)を中心に、“悪と正義”の壮絶バトルが描かれる本作。エリート警察官を演じたドンウォンは「これまでで最も演じるのが難しいキャラクターだった」と振り返る。
「“悪人に復讐をする”というようなわかりやすい動機付けのあるキャラクターではなかったことが一番、難しかった点です。もちろん、社会的正義を実践するというのが彼の行動の動機になるわけですが、なかなかつかみどころのない人物でした」とキム刑事を生身の人間として感じるために、試行錯誤したそう。
そして「僕がこれまで演じてきたキャラクターの中で最も、男性的なキャラクターだった」とも。「いつもは静かにゆっくり話す方」という彼だが、「今回は、ハキハキと早口で話すという役作りをしました。いつもの自分の声ではない声色で演じてみたいと思ったんです」と自身でも新境地だと実感している。
刑事役とあってシャツを着ていてもそのマッチョ度がわかるほど、フィジカル面も鍛え抜いた。課題として「まず体格を大きくすること」というように、体重は10キロもアップ。「格闘シーンもあるので、アクションチームからはボクシングの練習をしてほしいと言われました。そして、セリフ運びやアクションもテンポよいものにしたかったので、リズム感も念頭に置いて役作りをしました」。
ダイナミックなアクションシーンは、大きな見どころ。ドンウォンはケガもいとわず、映画づくりに没頭した。カーチェイスシーンで、相手の車側から銃撃を受け、ガラスが割れるという場面ではアクシンデントが…。「バーンという音が聞こえたと思ったら、ガラスの塊が頭に当たり、破片が首に刺さっていました。撮影中だったので僕は運転を続けていたんですが、カットがかかって鏡を見てみたら、顔から血がダラダラと出ていて。僕はもはや、ここまでかと思いました(苦笑)。俳優として、これからの活動に支障が出るかもしれないとまで思いましたね」。
今ではしっかりと回復し、笑顔でそう語る彼。そこまで没頭する仕事への情熱に驚くが、韓国映画の撮影現場では「誰もが使命感と自負心を持って、一生懸命に映画を撮っている」と語る。「それなりの絵を撮るためには犠牲も伴うもの。少しでもいいものを作りたい、頑張ろうとみんなで作品づくりに励んでいます。そして、誰もが楽しんでやっていると思います。そういった想いが、韓国映画のパワーになっていると思います」。
演じたキム刑事も独身で仕事に打ち込んでいるが、ドンウォン自身、36歳となった今も結婚はしていない。「僕の性格的に、結婚できるかわからない」と照れ笑いし、「実は子供の頃から、両親に“僕は結婚しないよ”と言っていたんです。両親は“大人になったら、どうなるかわからないよ”と言っていましたが、いまだにそのままで僕にもどうなるかわかりません」と楽しそうに語る。
どうやら「今は仕事が本当に楽しくて」と仕事モード全開の様子。イ・ビョンホン、キム・ウビンとの共演も「ものすごく刺激的だった」という。「この仕事は、退屈している暇がないんです。ちょっと立ち止まりそうかなと思うと、また新しい話が舞い込んでくる。どんどん楽しくなっていますね」と充実感いっぱいだ。
映画のタイトルにちなんで、「あなたは“何マスター”?」と聞いてみると、ひとしきり悩んだ後に「インターネットの検索ぐらいかな」と意外な特技を告白。「自分のことも検索したりします。みなさんが自分のことをどう思っているかを知ることも、大切な仕事の一部。よくないコメントを見て、“今に見返してやる”と元気を出したりもします」。穏やかな人柄の中に、チラリとのぞかせる茶目っ気と男気も、なんとも魅力的だ。【取材・文/成田おり枝】