別所哲也「10年はあっという間だった」ショートフィルムに託した想いを語る
2008年の2月に常設の短編映画館として横浜・みなとみらいの地にオープンした「ブリリア・ショートショートシアター」。開館から10年で、3000作品以上の短編を上映してきたこの劇場は、みなとみらい地区の賃貸借契約の満了に伴い、この12月で閉館が決定している。
その最終営業日となる2日「ブリリア ショートショートシアター 10years history & future 〜LiLiCo&別所哲也が語るショートフィルム〜」と銘打って、映画コメンテーターのLiLiCoと、この劇場の代表である別所哲也が登壇。ショートフィルムと駆け抜けた10年間の思い出を振り返った。
「このシアターを立ち上げるために2004年から準備に入っていた。10年で、横浜という街に愛されるコミュニティシアターになった」と、感慨深く語った別所。10年間で、400名以上のゲストが登壇するなど数々のイベントが催されたほか、個人で貸切ができるシアターとして、劇場でプロポーズを行なった人も数多く。しかも、プロポーズ成功率100%を閉館までキープし続けた。それにはLiLiCoも「あと1年だけ閉館延ばせませんか?」とコメントし笑いを取った。
そして「はじめた当初は10年の契約って、やっていけるかなと不安が多かった」と明かした別所。「振り返ってみるとあっという間で、ひとつの幕を閉じて次のステージにいくと思うとセンチメンタルな気分になる」と切ない表情を見せた。
これまで毎年2月14日の劇場オープン日にトークショーを行なってきた2人。映画の話そっちのけで、恋愛トークや世間話など、脱線することがすっかり定番となっていた。会場には、毎年必ず足を運んでいるファンも大勢来場しており、2人のいつもと変わらない熱いトークに、大盛り上がり。例によって、話題は映画の話から、クリスマスの話へと脱線。予定を訊かれたLiLiCoは「答えないわよ」と言いながらも、毎年友人たちと開催しているクリスマスパーティーについて明かし、さらに彼女の故郷であるスウェーデン流のクリスマスの過ごし方についてトークを展開した。
そしてトークショーを一時中断して、ショートフィルムの上映が行われた。上映されたのは、昨年の「ショートショートフィルムフェスティバル」でグランプリを獲得し、第89回アカデミー賞の最優秀短編作品賞に輝いたハンガリー映画『合唱』。
1999年に別所が発起人となってスタートしたこの映画祭は、毎年グランプリの受賞作がアカデミー賞の短編部門にエントリーされる公認映画祭となっている。のちに有名になる監督の初期の短編など、他の映画館ではなかなか観ることができない世界中の短編映画を上映する劇場として注目されてきたこの「ショートショートシアター」。
その最後を飾った『合唱』は、まさに別所をはじめ、このショートショートシアターに関わってきた人々の想いが結実し、この劇場と映画界最高の栄誉であるアカデミー賞が繋がった作品。「若い映像作家がショートショートを目指してくれて、映画館にも来てくれて、世界と繋いでくれている」と感無量の別所は、「日本の監督が短編でもアカデミー賞を取れるようになってくれれば嬉しい」と夢を語った。
映画館としての「ブリリア ショートショートシアター」は閉館することになるが、2018年2月14日には「ブリリアショートショートシアターオンライン」として再始動することが決まっている。「オンラインシアターとなっても、横浜で生まれた僕たちの証として、リアルなイベントができたらいいな」と、別所は笑顔を見せた。
取材・文/久保田和馬