ギレルモ・デル・トロのサプライズサイン会にファン熱狂!トークショーで2人の偉大な日本人を称える
第74回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得し、今年のアカデミー賞の有力作品として注目されている『シェイプ・オブ・ウォーター』を引っさげて来日中のギレルモ・デル・トロ監督が、30日に東京・渋谷のユーロライブで行われたFOXサーチライト・ピクチャーズ・ファンミーティングに登場。映画評論家の町山智浩と共に、本作の世界観を解き明かしていった。
本作の主人公は口がきけない女性。彼女を支えるのは黒人女性であったり、同性愛者の男性。そして研究目的で命を奪われようとする異形の存在。トランプ政権誕生によって助長された人種差別問題や、ハリウッドを騒がせつづける性差別問題とのつながりを指摘した町山に、デル・トロは「偶然だが、偶然ではない」とコメント。
「私自身もマイノリティなのでずっと前から感じていたこと。変化を求めない人が非常に多いけど、変わらないといけない。“アザーズ”という言葉ひとつで片付けてしまうことは、人の本質を見ていない。すべての人間は“私たち”と“アザーズ”だけではない」と、世界中に蔓延るあらゆる差別問題に警鐘を鳴らしたデル・トロ。
またジョー・ライト監督の『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でアカデミー賞にノミネートされている日本人のメイクアップ・アーティスト辻一弘についても言及。『ヘルボーイ』(03)でタッグを組んだ天才アーティストにデル・トロは「辻さんは、目の透明感や形を作ることや、宝石のような美しさと奥行きを作ってくれる人だ」と称賛を贈った。
そしてクリーチャーデザインをはじめ、物語の重要性や、それを構成するヴィジュアルや時代背景、キャラクター設定について熱量たっぷりに語り尽くしたデル・トロ。終盤、来場者からの質疑応答で昨年亡くなった「ゴジラ」のスーツアクター・中島春雄についてコメントを求められると、少し目を潤ませながら「完全に役になりきることができる、世界中の数人にしかいない天才だったと思います」と語った。
イベント終了後にデル・トロ監督が突然、会場に詰めかけたファンのためにサインをすることを宣言。ステージを降りてファンにサインを行っていくデル・トロ監督の周りに100名を超すファンが一気に押し寄せ、会場は一時騒然。会場の誰もが、根強い人気を誇る彼の手にオスカー像がわたることを期待した。
取材・文/久保田和馬