『空海』の原作者・夢枕獏と世界遺産マスターの尾上恵治が語る高野山の不思議体験

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『空海』の原作者・夢枕獏と世界遺産マスターの尾上恵治が語る高野山の不思議体験

夢枕獏の小説を『さらば、わが愛 覇王別姫』(93)の巨匠チェン・カイコー監督が映画化した『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』(2月24日公開)を、「10倍楽しむ方法」というトークイベントが2月22日に神楽座で開催。原作者の夢枕獏と、世界遺産マスターで堂宮大工でもある尾上恵治が登壇し、空海や高野山についてのトリビアや見どころを語った。

夢枕は「1行目を書いて、ラストを書き終えるまでに17年かかりました。書き終えた時は充実感でいっぱいでした」と柔和な笑顔を見せる。

尾上は空海のことを敬い「お大師さん」と呼ぶ。「御廟の修理をさせていただていますが、お大師さんがいらっしゃるのは実感しています。僕はすごく信仰心が薄いんですが」。

夢枕が高野山で、手を合わせて泣きながら般若心経を唱えている人を見て感銘を受けたと言うと、尾上は「お大師さんを感じるよりも、祈る人を見て、お大師さんを感じることのほうが多いと思います」とうなずいた。

尾上は、高野山で仕事をすると不可解なことが日常で起こると言う。「御廟の仕事をする時、工事写真を撮るんですが、まずいものは写らないんです。今日1日あかんという日はカメラの電源が入らない。関係者に『真っ黒でした』と言うとただ『そうですか』と言われる。そういう共通認識があるんです」。

夢枕も高野山で不思議な体験したそうだ。「巨大建造物のところを通ったら、和服を着た人が『たかしくん、たかしくん、だめでしょ』と誰もいないのに言ってるんです。その時僕は3人でいたんですが『子どもの姿、見えないよね』とお互いに確認し合ったんです。すごいところだなと」。

今回の映画化について尾上は「心配やったんです。冒涜されるような映画やったらどうしたらええんやろと。もちろん先生が冒涜しとるという意味じゃないですよ。これだけお大師さんのことが好きな人も珍しいから。でも、先生の原作どおりだと、どんなことになるんだろうかと。そしたら完成した映画は美しい方に昇華された感じがしました」と安堵の表情を見せた。

最後に映画の見どころを2人がアピール。尾上は「見逃してしまいがちな衣装。お大師さんの衣です。微妙に色が変わるんです」と言うと、夢枕は「染谷さんと白楽天役のホアン・シュアンさんの掛け合いがいいです。中国の映画なので、白楽天を立てなきゃいけないけど、白楽天は空海を立てなきゃいけない。そのバランスが実に良くできている」と絶賛した。

『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』は、若き天才僧侶・空海(染谷将太)と詩人の白楽天(ホアン・シュアン)が、長安で起きる怪事件の謎に迫っていく姿が描かれる。空海を染谷将太、白楽天をホアン・シュアンが演じる。

取材・文/山崎 伸子

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