リーアム・ニーソン、『トレイン・ミッション』の監督は「スピルバーグと同じく稀有な監督」

インタビュー

リーアム・ニーソン、『トレイン・ミッション』の監督は「スピルバーグと同じく稀有な監督」

主演映画『トレイン・ミッション』(公開中)を携え、『バットマン ビギンズ』(05)のキャンペーン以来13年ぶりに来日したリーアム・ニーソン。本作のジャウム・コレット=セラ監督とは、『アンノウン』(11)、『フライト・ゲーム』(14)、『ラン・オールナイト』(15)に続き、4本目のタッグとなった。65歳にして体当たりのアクションに挑み続けるリーアムに、本作の撮影秘話を聞いた。

リーアムは、ジャウム監督に絶大なる信頼を置いているようで「とにかく監督のことが大好きだ。常にインスピレーションを与えてくれるし、監督としての力量もどんどん向上している。彼はスピルバーグ監督のように、いつも作品の全体像が頭のなかに見えているという稀有な監督だ」と再タッグを心から喜んでいた。

本作は、会社をリストラされた60歳のマイケル(リーアム・ニーソン)が、 通勤電車のなかで謎の女に遭遇し、ある乗客を探せば報酬10万ドルを支払うという話を持ちかけられる。息子の学費や住宅ローンの支払いを抱えたマイケルは、躊躇しながらもその依頼を受け、元警官のスキルを駆使して対象となる乗客を探し始める。

中産階級に属する中年サラリーマンの現状がリアルに投影された本作だが、リーアムはマイケルの心情を理解できたと話す。「年をとって、若い人材と入れ替えられたりすることはよくあるよね。僕の知り合いの教師も、なんらかの理由で突然学校を辞めさせられたんだ。きっと誰しもそういう経験をしているんじゃないかな」。

マイケルは、道徳観を揺るがすような事態に追い込まれていくが、リーアムは彼を「正しいことをしようとする道徳的な男」として捉えた。

「この映画では、『あなただったらどうする?』という道徳的なジレンマが描かれる。マイケルはお金が必要な時期に、見知らぬ他人から自分がたやすくできそうなことを頼まれ、かつ高額な報酬を得られるとささやかれる。引き受けることは間違った判断ではあったけど、彼はその手付金を手にしてしまう。ただ、彼は悪魔と契約をした後も、責任放棄をせずに最後までやり通そうとするところは正しいと思う」。

65歳にして、またもや体当たりアクションに挑んだリーアム。「今回一番心がけたことは、リアリティに根ざしたアクションだ。なぜならマイケルも敵たちも、みんな格闘技のエキスパートではないのだから。僕はジャッキー・チェンの映画が大好きだけど、本作はそういうタイプの映画ではない。エンタテインメント性はある作品だけど、アクションシーンに関しては、そこを意識したよ」。

終点までの通勤時間=105分をリアルタイムで追っていく本作。タイムリミットが迫るなか、苦渋に満ちていくマイケルの表情が、観る者の心拍数を上げ、前のめりにさせていく。深みのある演技を見せるリーアムは、年々感情におけるリアリティを追求するようになっていったそうだ。

「僕がやりたいことは、役を特徴づけるために偽物の鼻をつけたり、変なアクセントで話したりするなどということではなく、役柄に自分の人間としての本質を少しずつ注入していくことだ。台詞が自分の口から発せられたとき、真実味を帯びていること。そこが一番大切だ」。

リーアムは、『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』(42)のオスカー俳優、ジェームズ・キャグニーをリスペクトしているそう。「キャグニーは、歌って踊れ、シェイクスピア劇もできれば、スリラー映画もこなせるという大スターだった。彼が映画における演技について聞かれたとき『ただ部屋に行って、そこにしっかりと腰を据え、真実を口にするだけだ』と言っていたんだが、まさにそのとおりだと僕も思う」。

果敢に挑み続けるアクション映画をはじめ、『シンドラーのリスト』(93)から、『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」』(99)、『バットマン ビギンズ』などのアメコミ作品まで、幅広いジャンルの映画に出演してきたリーアム。作品選びは歳を重ねるごとに変わってきたそうだ。

「ジャンルにもよるけど、現代を舞台にしたものなら娯楽性だけでなく、何か時代を反映しているような作品が好ましい。どこか心の糧になるような作品や、自分の人生で合点がいかないものをなにかで説明してくれるような作品に僕は惹かれる」。

さらにリーアムは「『人間とは非常に普遍的でありつつも複雑なものである」』というテーマを掘り下げたワールドシネマにも魅力を感じる」と語る。そういう映画がかかる映画祭はすごく重要な意味をもっているんじゃないかな。例えば映画によって、アフガニスタンや日本、中国、アメリカの方々のビジョンを世界中で分かち合える。そういう意味でも、映画はすばらしいメディアだと思う」。

取材・文/山崎 伸子

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