市川雷蔵と勝新太郎の魅力の違いとは?大映男優祭で佐藤忠男が解説
長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎など伝説の名優を輩出してきた映画会社・大映の男優たちをフィーチャーした「大映男優祭」が、4月14日(土)から5月11日(金)まで角川シネマ新宿で開催。4月15日に市川雷蔵が演じた時代劇の代表作『斬る』(62)が上映されたあと、日本映画大学名誉学長で、映画評論家の佐藤忠男登壇のトークイベントが行われた。
市川演じる薄幸の美剣士が辿る数奇な運命を描く『斬る』は、のちに<剣三部作>となる三隅研次監督×雷蔵コンビの最初の作品となった。
佐藤は、市川雷蔵と勝新太郎の魅力の違いについて解説。「2人はまるっきり違うタイプ。市川雷蔵は立ち姿が非常に美しいが、勝新太郎は、すくっと立つことはしない役者。実は、世界の映画界でも50~60年代は俳優の転換期だった。アメリカでマーロン・ブランドとジェームズ・ディーンが現れ、時代が変わった。人間の姿形の美しさに対する基準があの頃、変わったんです」。
そんななか、日本で頭角を表したのが勝新太郎だと佐藤は言う。「世間で正しい生き方やポーズの取り方が決まっていたのに対し、勝新太郎は『俺は知らねえよ』というスタンスをとった。雷蔵は、何をやっても『この人は信頼できる立派な人』となるけど、勝新太郎は、正統派に対して逆を行く人。この2つの流れが、その後の20年間を作っていった」。
また、大映の名優陣のなかで、いちばん女性から指示されていたスターについて、長谷川一夫の名を挙げた佐藤。「彼はどんな役柄もできる名人中の名人」と絶賛した上で「女形からヤクザ、(「忠臣蔵」の)大石内蔵助と何でもできるし、二枚目で女性のファンが多かった」と言う。
特に、長谷川一夫は女性へのファンサービスが素晴らしかったそうで「長谷川一夫の映画を観ると、客席の女性たちは、彼が自分がウィンクをしてくれたと思いこんじゃう」と苦笑いすると、会場からどっと笑いが起きる。
「レンズの目線にウィンクするんだから、誰だってそう思うんです(笑)。お客様へのサービス精神がある。『銭形平次』なんてたいしておもしろい映画じゃないけど、女房に対して必ずちらっと優しい表情を見せる。こういうチャンバラ映画の俳優はほかにはいない」とのこと。
今回の「大映男優祭」は、大映の創立75周年にあたる2017年夏に「おとなの大映祭」、冬に開催された「大映女優祭」に続き、最後を締めくくる第3弾となり、厳選した45作品が一挙上映される。
佐藤は今回のラインナップについて「これらの作品が一般公開されていた時はわりとB級扱いされていたことが多く、あまり本当の良さが論じられてはいなかった。でも、いま観直すと、こんなに念入りに撮っていたんだ!と感心する」と評価する。ぜひこの機会に、すばらしい往年の大スターたちが共演した大映映画をスクリーンで観てみてほしい。
取材・文/山崎 伸子