ウェス・アンダーソン&野村訓市、クリエイター2人の友情が生んだ“犬ヶ島”誕生秘話
世界中の映画ファンから絶大な支持を集めるウェス・アンダーソン監督が、アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされた『ファンタスティック・Mr.FOX』(09)以来8年ぶりに挑むストップモーション・アニメ『犬ヶ島』(5月25日公開)。このたび本作から、“犬ヶ島”誕生の経緯が明らかになる本編映像が到着した。
先日行われた第68回ベルリン国際映画祭で監督賞にあたる銀熊賞を受賞した本作は、日本を舞台に“犬ヶ島”に隔離されてしまった愛犬を探す少年と犬たちの壮大な旅と冒険を描く物語。そんな本作を作りだす上でウェスが絶大な信頼を寄せていたのが、劇中でメガ崎市の小林市長の声を担当し、原案とキャスティングにも携わっている野村訓市だ。
クリエイティブ・ディレクターとして世界を股にかけて活躍している野村は、日本の文化や正しい日本語、そして黒澤明監督作品で描かれたような人々が生き生きと暮らしていた戦後の時代の雰囲気をウェスにアドバイス。「訓市は僕たちが描くことに嘘がなく、日本らしいと感じられるように手助けをしてくれたんだ」とウェスは語る。
一方で野村は「ウェスは日本のコミックと、60年代の全盛期だったころの黒澤明のイマジネーションを持ち込み、徹底的に日本の歴史をリサーチしていた」と振り返り「だが僕は、映画にとって正しければすべてが完全に正確である必要もないと考えていたんだ」と明かしている。
このたび到着した映像はセリフをはじめ、浮世絵を模したイラストや垂れ幕など、映像の中には日本を意識した細やかな演出が確認できるものに。野村が演じる小林市長が“ドッグ病”に罹った犬たちを脅威と捉え「すべての犬たちを追放しろ!」と隔離する声明を発表。そしてゴミ島に犬たちを追放して生まれたのが“犬ヶ島”なのだ。
日本への愛情を全力で注ぎ込んだウェスと、日本人としてウェスのサポートを行なった野村。ともにクリエイターである2人がそれぞれの知識やセンスを信頼し合っていたからこそ生まれた、まったく新しい“日本”の姿。そこには想像を超えた魅力的な世界が広がっているはずだ。
文/久保田 和馬