【リズと青い鳥 特集】種﨑敦美&東山奈央が語る「響け!」シリーズでは見られないみぞれと希美の魅力
映画『聲の形』(16)や『たまこラブストーリー』(14)など、登場人物の繊細な心理描写を映しだしてきた京都アニメーション制作の、劇場アニメ最新作『リズと青い鳥』(4月21日公開)。吹奏楽に青春を懸ける高校生たちを描く本作で、最後のコンクールを控えるオーボエ奏者のみぞれとフルート担当の希美の声を演じた、種﨑敦美(みぞれ)と東山奈央(希美)に、作品の魅力や制作時のエピソードについて語ってもらった。
――制作決定時の気持ちと、台本を読んだ時の感想をお聞かせください。
東山「最初に台本をいただいた時は『ついにこの日が来たんだな』という気持ちでした。この2人のキャラクターを、劇場作品という場所で描いてもらえたことで、さらに細やかなみぞれと希美の関係が見えてくるんじゃないかなと思います」
種﨑「私は、またみぞれを演じることができるのがとてもうれしかったです。タイトルが『リズと青い鳥』ということで、2人の歴史のどの部分が描かれているのかな?と気になりました。台本を読んでみて、2人の瞬間や会話など、一緒にいるシーンが、台詞だけでなくト書きからも本当に細かく描かれていると感じました」
「響け!」シリーズと『リズと青い鳥』の違い
――それぞれのキャラクターを演じる際に意識したことはありますか?
種﨑「みぞれについては、大きく変えたところはないんです。でも、アフレコ時に監督の山田尚子さんから『全てが2人の傍観者。壁も木も空も2人を見守っている』という言葉をいただいて、なるほど、と腑に落ちたというか。『響け!』シリーズはたくさんのキャラクターが登場する部活のお話で、その中のみぞれというキャラクターだったんですけど、今回は“みぞれと希美の物語”ということが心に残りました」
――東山さんはどうですか?希美は特に新しく描かれた部分も多かったように思います。
東山「希美が持っている、みぞれへの気持ちですね。希美にとってみぞれが“たくさんいる友達の一人”ではなく、みぞれに対してだけ抱いている感情が確かにあることに気づくんです。それはみぞれが持つ音楽の才能への嫉妬だったり、みぞれは絶対に自分から離れていかないという変な安心感だったりするんですが、そういったエゴイスティックな自分に気づき、人間味が出てくるところが変わりましたね。明るく天真爛漫な人気者のはずの希美にもそんな人間らしい面があり、驚きもありましたが、キャラクターが深く描かれた分、きっと希美をさらに好きになっていただけると思います」
自然な高校生活の風景に思わず共感!
――演じていて、懐かしい気持ちになったり、キャラクターに共感したポイントは?
種﨑「もう全部かも(笑)」
東山「部活の時って床にペタンと座ってたなぁ、とか。スカートなのも気にしないで床に座っておしゃべりしていましたよね」
種﨑「お菓子を分け合ったり、おしゃべりしたりというような一つ一つのシーンもですが、学校に来てから部室に行くまでの道のり…階段の踊り場の景色とか、渡り廊下とか、そういう情景も『あ、知ってる、知ってる』って。それから、私にもみぞれにとっての希美と同じようにとても大切に思っていた友達がいて、教室の中でも彼女のことをしょっちゅう意識していましたね」
――みぞれを演じるにあたって、その時の気持ちを思い出すこともあったり?
種﨑「そうですね…。演技をする時って、自分の経験から『あ、この感情知ってる』みたいな記憶を掘り起こしていくような感覚なんですけど、みぞれに関しては、もっと奥深くにある“封印の扉”を開けるような感覚だったかもしれません(笑)」
――完成した作品を観ての感想、見どころを教えてください。
東山「『リズと青い鳥』はとても静かな映画。音楽や台詞だけでなく、息づかいの一つ一つをもらさずに耳をすませていただきたい作品です。それから『響け!』シリーズの特徴でもある“映像と音楽のマッチ”感。今回も、例えばキャラクターの歩いている足音とバックで流れている音楽のリズムが重なっているシーンなど、観ていてワクワクするような仕かけがたくさんあります!」
種﨑「みぞれと希美のいる現実のシーンと、今回の題材である絵本『リズと青い鳥』の物語世界のシーンは、それぞれにテイストが違っていて見どころの一つだなと感じました。それから、今回の『リズと青い鳥』には実はモノローグ(独白)がないんですよ。それでも、キャラクターが台詞の内側に隠している感情とか、なにも言わないシーンでもどんな気持ちでいるのかが表情や台詞の“間”から伝わってきて、とにかく一つの画から情報があふれてきます。そこも楽しんでいただきたいです」
取材・文/藤堂真衣