“世界の北野”への関心は高まるばかり!カンヌ国際映画祭で北野武監督記者会見
第63回カンヌ国際映画祭6日目の5月17日午後から、北野武監督の記者会見が行われた。予定よりも少し遅れて開かれた記者会見には、日本をはじめとするアジアのマスコミだけでなく、欧米からも多数集まり、“世界の北野”への関心の高さをうかがわせた。各国のジャーナリストたちとの主な質疑応答か以下の通り。
――ヤクザ映画でカンヌに帰ってきてくれてとても嬉しい。しかし、今までとは違うヤクザ映画だったので驚いた。そして、またどうしてバイオレンス映画を撮ったのか?
北野監督「初めはバイオレンス映画ばかり撮っていると言われたので、暴力映画をやめた。そうすると、今度はなぜバイオレンス映画をやめたのかと言われたので、今回はまたバイオレンス映画を撮った。ただ、前と同じ物は撮りたくなかったので、セリフを多くしたり、分かりやすい構成にするなど、今までと違ったものを追加していった。自分的には進化したバイオレンス映画になっていると思う」
――ギャング映画でインスピレーションを受けた作品は?
北野監督「深作欣仁監督の『仁義なき戦い』(73)はとても好きで良く観ていた。だけど、手持ちカメラの深作さんと自分とはスタイルが違う。だから、インスピレーションを受けたとすれば、深作さんのようには撮らないということを意識して撮影したということかもしれない」
――他の国のバイオレンス映画からの影響は?
北野監督「『グッドフェローズ』(90)や『ゴッドファーザー』(72)は好きで大ファンだが、あの世界感を日本人がやるわけにはいかない。だから日本のヤクザ映画を撮っている」
――カルティエ現代美術財団での展覧会など、映画だけじゃなくコメディアンとしての活動もフランスで紹介された。若い人にも人気となっているが、どう思っているか?
北野監督「いつも振り子のように生きないといけないと思っている。極端なことをしたら、また逆の極端なことをする。10の暴力が10の愛に変わるように。けど、振り子じゃなくてブランコのように一周するのは嫌だね(笑)。そして、いつもアンテナを張り巡らせ、いつも自分であらゆる物を消化したいと思っている」
――新しく映画を作るに当たって、どういう作り方を? また、最初から映画祭などを意識しているのか?
北野監督「新聞の漫画のように、4コマから考えている。起承転結、そこから枝葉を広げていく。そして、自分が監督を始めた頃は、カンヌもヴェネチアも知らなかった。だけど今は、なぜかこのような状態にいる。自分は浅草でスタンドアップコメディをやっていたら、いつしかTVに出演していた。今もそのような気分に近い。また、今回も最初からカンヌを意識して『アウトレイジ』を作ってはいない。意識していたら、こんなバイオレンス映画にはなっていないよ(笑)」