デヴィッド・ボウイや忌野清志郎…時代を代表するアーティストに愛され続ける写真家・SUKITAとは?
デヴィッド・ボウイを始め、T-REXのマーク・ボラン、YMO、忌野清志郎、寺山修司にポール・スミスといった世界的アーティストたちのポートレートやアルバムジャケットを数多く撮影してきた日本人写真家・鋤田正義。その名前を知らなくても、彼が半世紀以上に渡って発表してきた鮮烈な写真の多くは誰もが一度は目にしたことがあるだろう。そんな、御年80歳の今も第一線で走り続ける“生きるレジェンド”の創作の秘密と軌跡に迫ったドキュメンタリー『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』が、5月19日(土)より公開されている。
時代を駆け抜けたアーティストたちの輝きを切り取る!
本作は広告からファッション、ミュージックシーンや映画に至るさまざまな現場で多彩な写真を発表してきた鋤田の素顔とクリエイションに、仕事の現場や本人の肉声、坂本龍一や細野晴臣、布袋寅泰にMIYAVIといったミュージシャンはもちろん、ジム・ジャームッシュや永瀬正敏、是枝裕和といった映画人へのインタビューや鋤田との対談を交えて迫っていく。
そこで浮き彫りになるのは、デヴィッド・ボウイの77年に発表されたアルバム「HEROES」のジャケットに使用されたあの印象的なショットや、ほかでは見せたことのない柔和な表情をどうして撮ることができたのか?布袋寅泰がギタリストになるきっかけを作ったマーク・ボランの奇跡の1枚、YMOのアルバム「SOLID STATE SURVIVOR」のジャケット写真、永瀬正敏が出演したジム・ジャームッシュ監督作品『ミステリー・トレイン』(89)の撮影秘話など興味深いものばかりだ。
写真の原点と共に、鋤田のアートワークに迫る
そして、その驚くべきエピソードの数々が、高校生のときに買ってもらったカメラで母親を撮ったときから始まる鋤田正義の写真家としての人生をひも解く絶妙な構成に。観る者は、時代を記録した鋤田の写真と共に、彼の圧倒的な行動力と例え相手が若いアーティストであっても被写体とのセッションを対等に行う仕事のスタンス、広告の仕事で培われた想像力や新しいものを取り入れる若い精神にどんどんと魅了され、仕事を、人生を穏やかな笑顔で楽しんでいる鋤田の虜になっていく。
夢を追いかけている人、毎日の生活を謳歌したい人はもちろん、すべての人が生きる力をもらえるこのドキュメンタリーで、鋤田正義の写真にかける情熱やその作品たちに触れて欲しい。
文/イソガイマサト